004
「あ…」
男の子と公園で追いかけっこをしたり、遊具で遊んでいると日は完全に沈んでしまった。お腹もそこそこ空いているような気がする。
「どうしたってばよ?」
お腹を押さえどうしようかと考える私を覗き込んでくる青色の綺麗な瞳。「もう帰らなくちゃ」そう呟くと男の子はひどく泣きそうな顔をする。
「も、もう少し!もう少しだけ…!」
「でも、怒られちゃうから…」
「オレさ、オレさ、もっと遊びたいってばよ!!」
「っ…!」
なんて純粋なんだろう。
必死に食い下がってくる姿に胸が痛くなる。
何を言えばいいかわからない。言葉が見つからない。
同情なんてしたってどうしようもないのに、この子にとっては誰かと遊べることがどれほど特別なのだろうか。私が、それを支えられるのなら。
彼が、私を求めてくれるなら。
「明日も、遊ぶ?」
つい口をついて出た言葉に男の子は目を見開き、大きく頷く。
それが余りにも私の心を満たしてくれる。
これは同情だ。優越感だ。他人を蹴落とす最低な思考だ。自分より恵まれないものを見て自分が救われようとしている。わかっている。
それでも無知に笑う彼を見ていると自分を保てる気がした。誰にも必要にされない私にもできることがある。落ちこぼれでバカにされてきた私にも男の子一人と一緒にいることぐらいならできる。
「じゃあ、また明日来るね」
「や、約束だってばよ!破ったらいやだからな!」
「破らないよ!私、星屑 ながれ!」
「うずまきナルト!」
「じゃあね、ナルトくん!また明日!」
「また、明日!!」
明るい声に背中を押され、私は暗くなった里を走った。急いで帰って、誰にも見つからないようにこっそり部屋に行かないと。じゃないと明日公園に行くことができなくなってしまう。折檻部屋に入れられたら終わりだ。
なんだろう。すごく楽しかった。何も考えずに遊ぶのってこんなに楽しかったっけ?
もちろんサスケくんと遊ぶのも好きだけれど、やっぱり卑屈になるし、家のことが関係して一線を引いてしまう癖があるから、遊ぶ時の心情が少し変わってしまう。
明日もナルトくんと遊べると思うと、足取りが軽くなる。家に帰るのは大嫌いだけど、明日になるためだと思うとなんとなく苦痛もなくなった気がした。
「早く帰らなくちゃ!…っきゃ!」
「おっと」
そう呟くと同時、曲がり角から出てきた影に少しだけぶつかる。私は短く「ごめんなさい!」と謝って、もう一度駆け出す。しばらく走ったところで私はふと気付き、足を止めた。
「あれ、今の声って…」
イタチさん…?
振り返ってもそこに人影はなく、聞き間違えだと信じて前を向く。
なぜか、胸がざわつく。
気のせいだと首を振り、私は不安から目をそらした。
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