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「やー、諸君おはよう!」
「「おっそーーーーーい!!!」」

約束の時間をとうに過ぎた先生の登場にナルトくんとサクラちゃんの声が被る。この広い演習場ではその声も反響せずに木々の隙間に消えていく。
脱落率66パーセント以上なんて言うから気を引き締めて来たのに、先生がこうだとどうも脱力してしまう。人を見た目で判断しちゃいけないのに…。

「よし!12時セットOK!!」

先生は鞄から取り出した時計を四本並ぶ丸太のうち、右から二番目の“それ”の上に置き、カチリと時間をセットした。時間制限があるってこと?
そしておもむろにスズを三つ取り出すと、私たちによく見えるように掲げてくれた。

「ここにスズが3つある…。これをオレから昼までに奪い取ることが課題だ。もし、昼までにオレからスズを奪えなかった奴は昼メシぬき!あの丸太に縛りつけた上で目の前でオレが弁当を食うから」

その言葉にいやに納得する。なるほど…だからあの時朝メシを抜いて来いと指示を出したのか…。この先生…性格悪いのかな…。

「スズは一人1つでいい。3つしかないから…必然的に一人丸太行きになる。……で!スズを取れない奴は任務失敗ってことで失格だ!つまり、この中で最低でも一人は学校へ戻ってもらうことになるわけだ…」

カカシ先生の言葉にこの場にいる全員が息を飲む。これが脱落率66パーセント以上の超難関試験…。任務失敗で忍者学校に強制送還…。そんなの一ミリも気が抜けないじゃないか…せっかく一歩でも近づけたと思ったのに。

絶対…、取ってみせる。

「ああ…、手裏剣も使っていいぞ。オレを殺すつもりで来ないと取れないからな」
「でも!!危ないわよ先生!!」

余裕綽々な様子を見せる先生を心配する声を上げるのはサクラちゃんだ。ナルトくんに対してなんだか冷たいけれど、根は優しいいい子なのだろうな。

「確かに…武器は危ないと思います」
「そうそう!黒板消しもよけれねーほどドンくせーのにィ!!!本当に殺しちまうってばよ!!」

私の言葉に被せるように噛み付くナルトくんに、当の先生はため息をついてあくまでマイペースなスタイルは崩さず、「世間じゃさぁ…」とひどく覇気のない声で言う。

「実力のない奴にかぎってホエたがる。ま…、「ドベ」はほっといて」
「っ!!」
「…よーいスタートの合図で…」

「ドベ」と言う言葉にあからさまに反応したナルトくんはすかさずクナイホルダーからクナイを取り出し、中指を軸にくるりと回すと柄を掴み、先生に対して大きく振りかぶる。
本気だ…!!
止めないと!

「ナル…っ」
「そうあわてんなよ。まだ、スタートは言ってないだろ」

制止しようと一歩踏み出したその時、そこにはもうカカシ先生がいて、ナルトくんの動きを止めた上に、それを特に気に止めた様子もなく、まるで子供を諭す父親のように義務的に注意をするものだから言葉にならない。
早すぎて…見えなかった…。

「でも、ま…。オレを殺るつもりで来る気になったようだな…。やっとオレを認めてくれたかな?」

ナルトくんはワクワクとした心情隠さず、サスケくんも今まで燻っていたのだろう、強敵の出現にどこか嬉しそうだ。サクラちゃんは相変わらず心配そうだけれど…。

「ククク…、なんだかな、やっとお前らを好きになれそうだ…」

もちろん私は…。

「…じゃ、始めるぞ!!…よーい……」


ーーー楽しみで、仕方ない…!


「スタート!!!」


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