003

的から外れたクナイは無様に木の根元を転がる。こうなることはわかっていたからなんとも思わないが、サスケくんは「違う!もっと肩を、こう、シュッて中にひねるイメージで!」と必死に説明してくれていた。

「ごめんごめん。やっぱり私には難しいみたい!」
「むずかしいけど、絶対できるようになる!ね、兄さん!」
「そうだな。練習していれば必ず」
「……」

練習か…、と手にしたクナイを見つめる。
本当にできるだろうか。自分でも驚くほど不器用だし、根性はないし、なんでも「才能がない」にまとめて逃げる癖があるけれど。それでも練習次第なのだろうか。イタチさんが言ってくださったからできるって思いたいけれど、私は自分にほとほと呆れているのだ。

「兄さん!クナイ投げ教えて!」
「あ、私も…!」

サスケくんがイタチさんに駆けて行くのを追いかける。少しでも上手くなれるのであれば、教えて欲しい。二人で彼の前に立つと彼は苦笑を漏らして、私たちのおでこを両の手で突いた。

「いたっ」
「きゃっ」
「許せ、二人とも。また今度な」

優しく微笑む彼に私は突かれたおでこを押さえた。サスケくんも同じように押さえていて、似るものだと嬉しくなる。

「さあ、もう遅い。母さんが怒るから帰るぞ」
「えー」
「……」
「ながれも、夕飯があるだろう?」
「……はい」

イタチさんにそう言われてしまえば何もいえない。夕飯なんて言っても誰もいない机にメモと一緒に弁当が置いてあるだけだ。それがどれだけ苦痛か。

「途中まで送って行く」

そう手を差し出す彼に私は首を振ってみせた。イタチさんは「どうして?」と優しく問いながら首をかしげる。どうしてと聞かれたら答えに困る。多分「帰りたくないから」なんて言っても困らせるだけだ。

「……私、一人で大丈夫です。それだけです。じゃあ、お休みなさい。ありがとうございました」

二人の制止より早く私は駆け出した。うちはの一族は私には眩しく見えて仕方ない。


私は夕暮れに染まる木ノ葉の里を一人で歩く。星屑家の館は里の外、修練場が点在する森にある。だから里の中にいれば私は家の者に気づかれないのだ。みんながみんな母のように修練時にしか興味がないというわけではないので、見つかると連れ戻されてしまうだろう。そして、術以外の一般常識やらマナーやらを教えようとしてくる。私の才能がないとわかった途端これだ。私を他の一族との楔にするために躍起になっている。私をイタチさんやサスケくんに会わせたのもそのためだ。絶対思い通りにはならない。

行く当てもなく里をフラついていると簡素な公園を見つけ、そこを見やる。暇つぶしにはいいかもしれない、と中に入ると木の下のブランコに座る少年と目が合う。

「………」
「………」

互いに無言。なんでこんな時間に一人なんだろうとか、誰か一緒にいないのかとか、様々な疑問が募って言葉にならない。気がつくと私はその少年の前に立っていた。

「一緒に、遊ぶ?」

どうせ帰りたくないし、と手を伸ばすと少年の表情がパッと明るくなる。激しく頷く少年に私は苦笑。こんなことで喜んでもらえるならお安い御用だ。


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