046

「やっと抜けた…」

何度も体をひねってついに縄から解放された私は、用具室で一人達成感に満たされる。最後に残った手首の縄がなかなか手強かった。ちなみにサスケくんは私たちをまとめて縛っていた縄を二人でなんとか解いたのち、自分の手首の縄をあっさり解いて私を助けようとしてくれたのだが、先にナルトくんを止めてくれと頼んだため今はここにいない。
それにしてもナルトくんの行動は意外性が強すぎて予測が不可能だ。まさか縄でぐるぐる巻きにされるなんて思わなかった。やっぱり晩御飯は野菜炒めで決定。

「うげ…誰かいやがった」

そう一人で頷いていると、ガラガラと扉が開く。ばっとそちらを見ると、ポケットに手を突っ込んで立つシカマルくんがいる。

「シカマルくん?」
「なんだ…ながれか」
「なんだとはなんだ」
「めんどくせぇな…」

ツカツカとめんどくさそうな足取りでこちらまで来たシカマルくんは、すぐ隣に座り込む。そして縄の存在に気づいたのか、なんだこれ、と聞いてくる。原因がわからない以上どう伝えたって誤解しか与えないような気がして、「知らない」と返した。「ふーん、あっそ」ともうすでに興味はなさそうで、シカマルくんは相変わらずだと初めて会ったあの時から変わらないスタンスに苦笑する。

「何笑ってんだよ」
「ん?シカマルくんは変わらないから安心したの」
「んだよそれ。成長しねえなってことか?」
「逆 逆。最初からもう完成してたんだよ、シカマルくんは」
「言い方の問題だろ、それ」
「そうかな?」
「そうだよ」

万年隣の席だから、彼とのやりとりももう板について、まるで定型文があるのかと問いたくなりほどスムーズに言葉が出る。特にシカマルくんは頭がいいから、私の拙い言葉の真意まで曲げずに受け取ってくれるため、遠慮しなくていいのは非常に助かる。

「あ、そういえば班決めどうなった?」
「まぁ…妥当っつーか。里自体ももうわかってるだろうしな」
「ということは?」
「第十班、猪鹿蝶の腐れ縁トリオだよ」
「さすが!なんとなく予想できたけれど!」

やはり、木ノ葉の里に代々継がれる猪鹿蝶のコンビネーションは尊いものなのだろう。そこに限り尊重された確率は高い。…シカマルくんの頭脳を持ってして、全員の成績を平均化した説もあげられなくはないけれど、まあきっとそこまでめんどくさいことはしないだろう。

「猪鹿蝶かぁ…。秘伝忍術の組み合わせであんなにいい連携ができるってすごいよね」
「そうか?」
「すごいよ」
「まあ……いのもチョウジもすげえからな」
「シカマルくんもね」
「どうだか」

一度彼らに誘われコンビネーション練習を見学をしたことがあるが、あれは本当にすごかった。何より猪鹿蝶の脳として状況全部を把握して指示を出すシカマルくんはいつもと少し雰囲気が違ってかっこよかったな。もちろんチョウジくんもいのちゃんも、やっぱりいつも知ってる二人とは一線を画してて、素直に驚いた記憶がある。

「私たちも負けられないや」
「ああ、そうだ。班わけどうなったんだよ」

きっとこれを伝えたらすごいめんどくさそうな顔をするんだろうなと思うとワクワクしてしまう。だから私は浮かぶ笑顔を隠さないまま彼に伝えた。

「第七班はね…?」

私の言葉にわかりやすく眉根を寄せる彼に、堪えきれずに吹き出した。
サスケくんとナルトくんが一緒なんて言ったら、きっと多分、同期のほとんどがこの表情をすることだろう。


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