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結局こうなるのか、と思わず笑ってしまった。
あの後チョウジくんだけが戻ってきて、「僕たち、説明会の教室ここじゃなかったみたい」と手を振って出て行ったため、席に一人になってしまった私をボコボコにされたナルトくんが呼ぶものだから、その隣に座って、なんだか見知った二人と同じところにいるなんて、いつも通りすぎて呆れも通り越して笑えてくる。サスケくんが何か言いたげな顔をしていたけれど、無視しておいた。
「今日から君達はめでたく一人前の忍者になったわけだが…。しかしまだまだ新米の下忍。本当に大変なのはこれからだ!」
黒板の前に立つイルカ先生の言葉に心が浮き足立ってくる。「一人前の忍者」まさか私が本当にそこにたどり着けるなんて思っていなかったから。
「えー…、これからの君達には、里から任務が与えられるわけだが、今後は三人一組、ないし四人一組の班を作り……、各班ごとに一人ずつ上忍の先生が付き、その先生の指導のもと任務をこなしていくことになる」
長い話のどれだけをナルトくんは理解したのか甚だ疑問だが、きっとサスケくん以外と組みたいとかそう思っていることだろう。私だったらサスケくんともナルトくんとも組みたいけれど、それはそれで大変そうだ。
「班は力のバランスが均等になるようこっちで決めた」
イルカ先生の言葉にクラス中から「えーー!!」っと非難の声が上がる。当然だと思うけれどなぁ…。
ぼんやりと先生が名前を読み上げていくのに耳を傾ける。名前を呼ばれた人は一喜一憂で、肩を落としている人がこれから上手くやっていけるのか正直心配でもある。
「じゃ、次7班」
結局ここまで名前は呼ばれなかった。ナルトくんもそわそわしているし、そろそろ呼ばれたい。
「春野サクラ…うずまきナルト!」
「ヤッター!!」
隣の彼が嬉しそうに万歳をする。気になる女の子と一緒だなんて、羨ましい限りだなぁなんて他人事のように見つめていると、「星屑 ながれ!」と自分の名前まで呼ばれて正直驚いた。ナルトくんは更に嬉しそうだ。
「それと…うちはサスケ」
しかし、たったその一言でナルトくんは項垂れる。逆に落ち込んでいたサクラちゃんは嬉しそうに「しゃーんなろー!!」と先ほどまでのナルトくんみたいだ。それを微笑ましく見ていると、その向こう側にいたサスケくんと目があった。心なしか嬉しそうだ。それがわかるからつい私も口角が上がってしまう。
「イルカ先生!!よりによって優秀なこのオレが!何でコイツと同じ班なんだってばよ!!」
全く、ナルトくんは何を言っているのと激しい頭痛を覚えた。イルカ先生は一度ゆっくりと呼吸を落ち着けると、たっぷりの間をもって話し始める。
「……………………。サスケは卒業生28名中一番の成績で卒業。ナルト…お前はドベ!」
言わんこっちゃないと思わずため息。自分に自信があるのは彼のいいところだけれど、やはり自信には裏付けがないとダメだ。
「いいか!班の力を均等にすると、しぜーんとこうなんだよ」
信頼するイルカ先生の言葉に、流石のナルトくんも衝撃を受けたのだろう。机の下で拳を握っているのをちらりと見てしまった。だけれど、それで落ち込むような男じゃないって言うのは、多分誰よりも私がよくわかっている。
しかしそれに追い打ちをかけるようにサスケくんが鼻を鳴らした。
「せいぜいオレの足引っぱってくれるなよ、ドベ!」
「っ…!!何だとォコラァ!!!」
「いい加減にしなさいよナルト!!」
ナルトくんが怒るのはいいとして、まさかサクラちゃんまでここまで短気とは。彼女はがたりと立ち上がると、今すぐにでもサスケくんに殴りかかりそうになるナルトくんをポカポカと叩いて止めている。
なんというか…先行き不安だけれど…ナルトくんにはいい薬なのかもしれない。ただ…巻き込まれたくはないな。
「じゃ、みんな、午後から上忍の先生達を紹介するから。それまで 解散!
イルカ先生の声が耳に入っているのかいないのか、隣は未だに騒がしいし、サスケくんはお弁当を持ってどこかに行ってしまうし…。
「はぁ…」
こんなの、ため息だって漏れてしまうだろう。
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