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「よぉ」
「あ、シカマルくん」

説明会が開かれる教室はひどく雑然としていた。ニコニコと笑って先に行ってしまったナルトくんはなぜかサスケくんの隣に座っていてヒヤヒヤする。あんたサスケくんのこと嫌いでしょうに…、きっと嬉しくて気づいてないんだろうなあ。当のサスケくんも何を考えているのか難しい顔をしているし、あそこに近づくのは得策じゃないと手前の方の席に着く。すると隣から聞きなれた声がしてそちらを向くと、相変わらずめんどくさそうなシカマルくんがいた。

「いいのか、お前は。ナルトのとこに行かなくてよ」
「シカマルくんの言葉を借りると、めんどくせえかな」
「お前、本当に強かになったよな」
「ふふ、ありがとう」
「褒めてねぇよ…」

はぁとため息を吐くシカマルくんの隣にはチョウジくんがいて、私は少し身を乗り出して声をかける。

「おはよう、チョウジくん」
「うん、おはようながれ」
「あれ?いのちゃんは?」
「相変わらず隣狙ってる」

チョウジくんがそう言いながら指をさす方を見ると、いのちゃんが項垂れながらこちらに来るのが見えた。もしかしてと視線をあげると、サスケくんとナルトくんの間にサクラちゃんがいる。よくあの激戦区に突入したものだ。普通に感心してしまう。

「いのちゃん、お疲れ様」
「ながれ〜!まさかあのデコ女に先越されるなんて…」

落ち込むいのちゃんは私の隣に座って拳を握っていた。いのちゃんだって美人なんだから、もっと攻めたっていいと思うけれど…まぁ、サスケくんは嫌がるだろうなあ。

「ながれってサスケくんと幼馴染じゃない?」
「まぁ、一応」
「好きな女の子のタイプってわかる!?」
「ロングヘア以外にってこと?」
「そう!!」
「うーん…」

それは忍者学校時代にもよく色んな人に聞かれた質問で、サスケくんにさりげなく聞いたら「ロングヘア」と返って来たのを一人の子に返したら瞬く間に広がり、一時期くノ一教室にロングヘアブームが巻き起こったのは懐かしい思い出だ。サクラちゃんといのちゃんが髪を伸ばしてるのもそのためだと言っていたっけ。

「ロングヘア以外だったら……」

なんだろうと考えていたその時、背後から女子の悲鳴が聞こえた。それに瞬時に振り向いたのはシカマルくんで、咄嗟にいのちゃんの目元を隠して「悪いながれ、また後でな」とチョウジくんと二人でいのちゃんを抱えて教室を出て行ってしまった。
いのちゃんは「なにがあったのよ!!」と抗議していたみたいだけれど、うん。見ないほうが絶対に得策。

「何があってそうなるの…」

サスケくんのことが好きな子に、ナルトくんと彼がキスしているところなんて見せたくないだろう?
私は深いため息をついて頭を抱えた。


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