042
タンスに大切にしまっていた彼の服を取り出し、袖を通す。下にはスカートを履いて、胸当てをつければこれでもう十分戦える。一人前である証拠の真新しい額当ては腰に巻いて、髪飾りでパチンと髪を止める。そして最後にペンダントを首から下げて、準備は整った。
「よしっ」
一度伸びをしてからそっと髪飾りに触れて小さく問いかける。
−−今、どこにいますか?
私はあなたを見つけなければならない。まだ、信じているから。全てが嘘だなんて思えないんだ。眼を閉じれば今でもあの口付けを思い出せる。彼の唇の震えがまだ私を繋ぎ止めていた。
そしてペンダント。
−−今日、また一歩あなたに近づきます。
何度も何度も挫折しそうになって、その度に私を立ち上がらせてくれたあの一文字を胸に刻んで。彼みたいに簡単には忍になれなかったけれど、それでも…。それでも私は、忍になれたから。
「いこう」
そう決心して部屋を出ると、早々にナルトくんが玄関に立って私を待っていた。
「遅いってばよ!!」
「ごめんごめん」
少し汚れたその額当てが眩しくて、眼を細める。良かったねって何度も泣いてお祝いしたっけ。昔はあんなにナルトくんを嫌煙していたイルカ先生からの贈り物だなんて、過去の私に言ったらなんて言うだろうか。
「ぼーっとしてんなよ!行くぞながれ!」
「待ってよナルトくん。そんなに急がなくても…」
「早く行きてえの!だって今日は…!」
「合格者説明会、でしょ?まさかナルトくんと一緒に行けるとはねえ…」
「ど、どう言うことだってばよ…」
むすっと唇を尖らせる彼に「なんでもないよー」とへらり笑って先に家を出る。彼は「あー!!」と声をあげてすかさず追いかけて来た。知ってたけれど。
「先に行くなんてずりぃ!」
「モタモタしてるからでしょ」
「それは…っ」
「嬉しいのは、私も一緒」
「え…?」
「だって、信じてるもん。ナルトくんが火影になるって」
「………っ!!」
私の言葉にナルトくんはあからさまに笑顔を輝かせる。わかりやすいなんて言ったらまた怒るだろうか。それでもいいかもしれない。
「やっぱりながれは分かってんなー!」
「はいはい」
堂々と胸を張る彼に苦笑を一つ。
彼の夢はずっとずっと昔から変わらない、それがいかに眩しいか君は分かってないんだろうな。
「見せてよね、絶対に。その背中に火影の文字が輝くところをさ」
ナルトくんはニカっと歯を見せて笑うと、「おう!」と返事をくれる。
この迷いない意思がいつも私を導いてくれたんだよ。だから、私も強くなってそれを支えられるようにならなくちゃ。
そう、忍とは−−−。
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