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「ながれ!お昼!」
「ちょ、サスケくん!」

最後にイタチさんと会ったあの日から随分時間が過ぎた。あんなに落ち込んでいたサスケくんも今は私を嬉々としてお昼に誘うぐらいには元気で、まるであれが杞憂に終わったのではないかと思ってしまうほどだ。本当に杞憂ならいいのだけれど…。

「最近ながれの弁当豪華だよなぁ」
「え?そうかなぁ?」

以前のように肩を寄せて弁当を開くと、サスケくんが私の手元をのぞいて来た。実は数日前から自分とナルトくんの分の弁当を手作りしているのだが、豪華と言われたことが素直に嬉しい。謙遜はしたものの、嬉しくて口角が上がってしまう。

「それを言うなら最近のサスケくんはもっとすごいよ」
「え?」
「なんだか道が拓けた?みたいな、迷いがない感じがする。…何かあった?」
「それは…」

サスケくんは少し恥ずかしそうに口を噤んで、内緒と笑った。
ああ、良かった。笑顔だ。笑っている。やっぱり、笑ってる方がずっといい。

「えぇー、教えてくれてもいいじゃん」
「へへっ、すぐながれにも見せてやるからっ!」
「見せる?」
「そう!もっともっと上手になったら、見せるから!約束!」

そう言って彼は小指を差し出す。私は迷いなくそこに自らの小指を絡めた。

「約束、絶対だからね」
「当たり前だろ!」

サスケくんが何の気兼ねもなく笑えるなら、それでいいや。最後に見たあの背中も後悔も何もかも忘れて、今は目の前の、すぐ隣の幸せに身を預けたってきっと悪くない。



私も負けてられない。

「ナルトくん、いってくるね!」
「おう!」

伸びた前髪をしっかりととめ、首からペンダントをかけて家を飛び出す。

元々強いサスケくんが努力しているなんて聞いたら、じっとしていられなかった。私一人だって、彼の教えをなぞって修練をすれば、少しでも近づけるはずだ。

修練場についた私は準備運動も早々にチャクラを練って印を組む。
豪火球よりも上の火遁をマスターできるようにならなきゃ。それに…あれも……。

「風遁…!!」

ありったけのチャクラを練って印を組んでも風一つ起きない。わかっていたから落ち込みはしないが、母から教わった星遁の生み出し方をなに一つ活かせないのが悔しくて仕方ない。これもいつかはどうにかしなければ。
もし将来的にシスイさんと母からもらった力で戦えるならそれ以上に嬉しいことはない。わがままかもしれないけれどどうしても、報いたくて仕方ないのだ。

そのために、今私は笑っていられる。


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