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その日はナルトくんと同じ布団で抱きしめあって寝て、いつもよりよく眠れた。起きて一番にペンダントの中を開き「ああ、夢じゃないんだ」って少しがっかりして、朝食を作るためにキッチンに立つ。最近はミコトさんにも褒められるようになってきたから、家でも簡単な朝食だけは作るようにしている。目玉焼きとお味噌汁とご飯、私たちにはこれでもう十分。それからやっとナルトくんを起こす。その目元が少し赤くなっていて、昨夜私が突然泣き出すのに一緒に泣いてしまった彼を思い出した。

「ナルトくん、起きて」

肩を軽く揺すって目覚めるのを待つ。
今日は朝から買い物して、お昼は二人で食べて、昼過ぎからまた修練場に行く予定だ。
……いや、先にうちは家に行こう。イタチさんの様子も気になるし、きっと身近な人が亡くなってサスケくんだって落ち込んでいるかもしれない。私が言えたことじゃないけれど、少しでもそばにいてあげたいと思う。

「ん……ながれ…?」
「あ、起きた。ナルトくん、おはよう。ご飯だよ」



なんとかお買い物を済ませて一度荷物を家に置き、二人で一楽に行ってご飯を食べて、私は修練場に向かおうと家を出る。その道中にでもうちは家に寄ろうと、いつもより遠回りの道を進む。頭にはイタチさんのからもらった髪飾りをつけ、首からシスイさんからもらったペンダントを下げて。
うちは家は基本的に固まった場所にあるので、その居住区は「団扇」のマークがたくさん目に入る。その光景はうちはの誇りと歴史を感じて初めてきたときはこの異様な空気に少し恐怖を感じた気がする。
それにしても今日は随分空気が重い気がする。どうしてだろうとそんなことを考えながら曲がり角を曲がった時、何かが空間を切り裂いて壁に突き刺さる。思わず私は足を止めて突き刺さった先を見ると、それはクナイで、無残にもうちはの家紋を撃ち抜いていることに気づく。
ぞっと身の毛がよだつ感覚。足元が崩れるような恐怖に見舞われ、角に体を隠す。


「オレの"器"は、この下らぬ一族に絶望している」


聞こえてきたその声は紛れもなくイタチさんのもので、その冷たさに言葉がない。あの人はこんなに冷ややかな声を出すような人だっただろうか。
こんなの、私は知らない。

「一族などと…ちっぽけなモノに執着するから本当に大切なモノを見失う…。本当の変化とは規制や制約…、予感や想像枠におさまりきっていては出来ない」
「傲慢なことを…!!」

続く言葉、焦ったようなフガクさんの声に、気付けば私は走り出していた。
何がおきてるの。これはなんなの。一体どこで何が変わってしまったの。
あれは本当に、イタチさんなの…!?

「どうして…っ!」


−−大丈夫、イタチさんはサスケくんを置いて行ったりしないよ。


いつかサスケくんに言ったその言葉が、今鮮明に蘇って仕方ない。
今度は否定できそうになくて、自嘲の笑いすら溢れなかった。


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