002

「サスケくん!」

イタチさんと手を繋いでうちはの敷居を跨ぐと、中からバタバタとサスケくんが出てきた。私は唯一の友達に会えたのが嬉しくて駆け寄るとサスケくんも両の手を広げて喜んでくれた。

「ながれ!どうしたんだよいきなり!」
「森でイタチさんにあったんだ!」
「森?またあの難しい術の練習か?」
「そうそう。でも全然ダメだった!」

ちょっと悲しくなるのを抑えながら笑うと、サスケくんは眉を釣り上げて私の頭をガシガシとかき撫でる。どうしたの?と問いかけると、彼は「ながれならいつか使えるようになる!!」と根拠もないことを自信満々に言うものだから笑ってしまう。

できないことは、私がいちばんよく知っている。

「ありがとう、サスケくん!私頑張るね!」

サスケくんは私と比べて優秀だもんね。
そんなこと口が裂けても言えなくて、言いたくなくて、きっとたった一人の友達が傷付いてしまうから、私はその言葉をそっと飲み込んだ。

私はいつから、友達を僻むようになっていたのだろうか。その事実が悲しくて落ち込みそうになると、イタチさんが全て見抜いていると言いたげに微笑み背中を撫でてくれるから、もう一度前を向く。イタチさんには一生敵う気がしない、憧れで尊敬。

「ながれ!今日は何する?」
「えー、どうしようかな。クナイの的当てはこの前いっぱいしたし…、隠れんぼ?鬼ごっこ?」
「やっぱりクナイの的当て!」

この前いっぱいやったというのにサスケくんは懲りずに声を上げる。彼が嬉しそうにいうと私も嬉しくなって、絶対勝てないってわかっているのに大きく頷く。

「怪我をすると心配だから同行する」

イタチさんははしゃぐ私たちを諌めるとそう申し出てくれる。サスケくんは「怪我なんてしないし!」とむくれているが、残念私は高確率で怪我をするのである。きっとイタチさんもそのつもりで言っているはずだ。

「ありがとうございます、イタチさん」
「いや、いい。俺の見ていないところで怪我をされたらそれこそ嫌だからな」

さらっとそんなことを言われてニヤニヤしてしまう。こういうことを簡単に言ってのける人だとわかっていても、ドキドキするものはドキドキする。
ニヤつく頬を押さえていると、サスケくんに指差しで「お前顔赤いぞ!」と指摘されて、その指をとっさに叩いていた。

「いた!!」
「指差すのはやめて!分かってるから!!」

これだから女心のわからないサスケくんは、と肩をすくめると、イタチさんは楽しそうに笑って、私もつられて笑って、サスケくんだけは「なんだよー!」と唇を尖らせていた。


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