037

ここはどこだろうか。
森ではない。辺りを控えめに見渡すと自分が木ノ葉の里に戻ってきていることに気づいた。いつの間に。よく覚えていない。
時刻はどれぐらいだろうか。ナルトくんはもう起きただろうか。そんなことを漠然と考えながらあてもなく歩く。このままどこかに行ってしまえればいいのに。でも、逃げようとするたびに強く手に握った紙を思い出して軌道を戻してしまう。私は彼からは逃げれない、逃げたくない。

とぼとぼと歩くたびに、彼との日々が鮮明に思い出される。シスイさんがいたからほんのちょっとだけ自分に自信を持てた。まだまだ道のりは長いけれど、いつか私だって同じ場所に立つんだ。
−−そしたらきっと、彼の死にも近づける。

明日からまた修練を頑張ろう。彼に教わったことを思い出しながら、だから今日だけは、許してほしい。今日だけは、もう一度泣かせてほしい。

「………」

頬を伝う熱を感じながら、私は歩みを止めない。泣いても進まなきゃ。私の目の前に広がる道は茨の道だ。そこがどれだけ険しくても、足が傷ついても止まらないように。痛くても怯まないように。

「ながれ!!」

ぐっと目元を拭ったその時、聴き馴染んだ明るい声が耳に届く。反射的に顔を上げるとそこにはこちらに手を振るナルトくんの姿がある。

「ナルトくん!?うわぁっ」
「ながれ…っ」

どうしてと問いかけるよりも早く、勢いよくナルトくんに飛びつかれて身動きが取れない。ぎゅうぎゅうと抱きしめる様はやはり以前から変わらなくて思わず口角が上がった。

「どうしたの、ナルトくん」
「それはおれの言葉だってばよ!いきなりどこかいくし、嫌な予感がするし、ずっとずっと探してたんだぜ!?」
「ずっと…?」
「ずっと!おかげでくたくた…」

ナルトくんは心底脱力した声音でそう言うと、一変してにかりと笑い、「でも見つけた!」と。それがどれほど嬉しいか、ナルトくんは知っているのだろうか。

探してくれた。
見つけてくれた。
自分でもどこにいるのか、どこにいくのか、何もわかっていなかったのに。

今度は私がナルトくんを抱きしめる番。


「ながれ…?」
「ありがとう…ごめんね…いっぱいいっぱい走ったよね?疲れたよね?ごめんね、ありがとう。見つけてくれて…ありがとう」
「当たり前だろ!ながれがどこに行ってもおれがぜってえ見つけるってばよ!」
「……うん」

絶対、見つけてね。
私がどこにいても、ナルトくんだけは見つけて。
それだけで、十分頑張れるから。


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