033

「最近暗いってばよ」

ぐにっと突然頬を突かれ素っ頓狂な声が漏れる。犯人であるナルトくんは非常に真面目な表情で私を見つめていた。

「そ、そうかなぁ?」
「うんうん、ちょーくれえの!」
「そっかぁ…」

ナルトくんには全てお見通しなのかもしれない。そう思うと恥ずかしい反面少し嬉しかった。わかってくれる人がいるということはとても心強い。

「あのさ、あのさ!おれ、むずかしいはなしはわかんねえけど、いい方法知ってるってばよ!!」
「え!?な、なんの!?」
「元気になるには美味しいラーメン食べてゆっくりお風呂に入って寝るのが一番だろ!?」
「…ら、ラーメンなんだ…」
「でも、もうご飯は食べたし…。次は…」

ナルトくんは私の手を取ると、キラキラに眩しい太陽のような笑顔で言い放った。

「一緒にお風呂に入ろう!」



「ながれー、狭くないか?」
「狭くないけど…。これ、本当に必要なこと…?」

二人で体を洗いあって、いざ湯船に浸かる。お風呂自体は私たちには大きすぎるものなのでサイズの問題はないのだが、一緒に入る必要はあったのだろうか。

「一緒に入ったらきっと二倍早く元気になるってばよ!」
「ほんとにいつも根拠ないよね…」

ふんっと全裸で胸を張るナルトくんがやけに可愛くて苦笑すると、彼はそんな私をじっと見て「もっと笑った方が可愛いってばよ!」とさらっというので驚く。

「ナルトくん……わかってる?」
「ん?」
「可愛いの意味」
「当たり前だろ!?なんでンなこと聞くんだってばよ!!」
「いやぁ…余りにもさらっと言うから…」
「さらっとじゃねえよ!いつも思ってることだ!」
「…………」

強気にそう言う彼に少し頬が熱を持った気がした。ナルトくんはいつもまっすぐ言葉を伝えてくるから心臓に悪いのだ。私は火照る顔を隠したくて、口元をお風呂に埋める。ナルトくんのこういうところシスイさんに似てるから本当に困る。

「ながれ…?なんでなんも言わねえんだよー」
「………」

心配そうにこちらを伺ってくる彼を前に、私は水面に泡を起こすつもりで息を少量吐き出した。ブクブクブクと泡立つ様はまるで私の心情のよう。

「ながれーー!無視すんなって」
「………あのねぇ」

あまりにもしつこく聞いてくるものだから、ため息をついてから声をあげると彼の表情がパッと華やぐ。

「うっ…」

これはずるい。とてもずるい。
何も言えなくなるじゃないか。

「ナルトくん……」
「ん?」
「今日、一緒に寝ようか」

観念してそう伝えると、彼は更に嬉しそうに何度も頷いた。


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