027

「では、今日は隣の席のお友達と一つの問題を解いてもらうぞ!」

黒板に堂々と書かれた「いっしょにとこう!」という文字に思わず隣をちらりと確認する。
私の隣の彼はあいも変わらず机に突っ伏して眠っていた。

「任務においてチームワークは非常に重要なものとなる。特に、中忍以上になると様々な人と共に任務を受けることになるだろうから、この授業ではチームワークを少しずつ学んで欲しい」

では隣のお友達ともう少し近付いて、とイルカ先生がハキハキ言う中、私は隣の彼に体を寄せる。そして耳元に口を寄せて名前を呼んでみる。

「シカマルくん」
「………」
「………」

反応はない。
どれだけ熟睡しているのだとため息をつきながら肩を揺さぶる。

「シカマルくん、シカマルくん。ねえ、問題とこ?シカマルくん!」
「んー…」

のそりと体を持ち上げた彼は私を一瞥してから黒板を見て、うげ…と呟く。

「めんどくせぇ…」

流石に私が関わっているのはまずいと思ったのだろうか、彼は目元をこすって前から回ってきたプリントを受け取った。私はそんな彼の手元を覗き込んで眉根を寄せてしまう。

「シカマルくん…」
「ん?」
「私、全然わかんない…どうしよ…」

多分これは架空の指令書だろう。つらつらと書かれた長文の下には「では、隣のお友達とこの任務を遂行する場合、どのようにすれば一番良いだろうか。話し合ってみよう!」などと書かれていて、全くちんぷんかんぷんである。

「………ながれ」
「え、なに?」

うーんと悩む私に彼が声をかけてきた。そちらに視線をやると、既に回答の欄にペンを走らせていて驚く。筆跡に迷いは見られない。

「お前の得意な忍術はなんだ?」
「得意っていうか……基本的に火遁しか使えないけれど、火遁だったら自信あるよ」
「お前、火遁使いだったのかよ」
「うん。アカデミーだとまだやってないからみんな知らないと思うけれど…」
「なるほどな。まあ、お前が戦闘系でよかったぜ。俺はバリバリの支援系だからな…」

シカマルくんが忍術使っているところをあまり見たことがないけれど、確か奈良一族には秘伝忍術があったはずだ。多分それが彼の基本戦法なのだろう。その秘伝忍術が支援系ならば、火遁使いの私との相性は最良ではないが悪くない。

「ど、どう?どうにかなりそう…」
「ん?あー、ま、適当だってどうにかなるだろ」
「えー…」

頬杖をつきながらシカマルくんはペンを走らせる。覗き込みたいけれど、あまり見られたくないのかもしれないと思うと気が引けた。
クラスのみんなはあーでもないこーでもないと話し合ってるようで、私たちがひどく異質に感じる。

「できた」
「え!?」

私が辺りを見渡していると、そう言ってペンを置いたシカマルくんが席を立って回答用紙をイルカ先生に提出してしまう。結局何が書かれているのか分からなかったが、イルカ先生が嬉しそうに笑っているしきっと合格なのだろう。
ポケットに手を突っ込んだ彼は、私の隣に帰ってくるなり机に突っ伏す。また寝るのかと突っ込みそうになったが、課題を一人でやらせてしまったという罪悪感で何も言えない。

何もすることがなくなった私は、カバンから忍術書を取り出し読むことにした。周りのみんなはまだまだ苦戦しているようだ。多分、私たちが合格したのを誰も見ていないだろうと思うと、彼の秘密を知れたようで少し嬉しくなった。


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