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「なんか上機嫌だな」
「え?そうですか?」

地下での修練中、一心に火遁を吐き出していた私にシスイさんがそう言ってくる。自分ではよく分からなくて首をかしげると、見てればすぐわかると微笑まれてなんだか恥ずかしくなった。

「いいことがあったのか?」
「んー…。もうすぐアカデミーの入学式だからかもしれません」
「あー…。もうそんな時期か」

シスイさんは彼方を見上げて考える素振りを見せる。

「って言ってもなあ、あんまりアカデミーの記憶がないからなあ」
「え?」
「俺は入学してあっという間に卒業したしな」
「!?さ、流石です!!」

いやー、それほどでもある。とシスイさんは鼻を高くした。シスイさんの自分に自信があるところもすごく好きだ。…どんなところだって、なんだって好きだけれど…。

「私はきっと卒業も危ういかもしれません…」
「でも入学試験は大丈夫だったんだろ?」
「はい…。でも、やっぱり私には…」

結局私は星屑家の落ちこぼれだから。入学試験はなんとか突破したものの、その先の方がうんと心配だ。シスイさんに稽古をつけてもらっていても数歩しか前進していないように思えるし、相変わらず火遁以外は使えないし。

「そんな暗い顔すんな!お前は真面目で一生懸命で、根性があるからな!絶対卒業できる!」

根拠のない言葉だけれど、彼が言えば本当にそうなる気がしてみるみるうちに自信が湧き出てくる。シスイさんを裏切るなんてできない、頑張ればきっと私にだって。

「私…卒業してちゃんと忍者になれたら…シスイさんと一緒に任務をこなしたいです…」
「任務?」
「シスイさんは、暗部だし…私はこんなにダメダメだけれど…いつか…」

その隣に立てるように。
縋るように彼を見つめると、シスイさんはあっけらかんと笑っていた。その笑顔にすっと胸が軽くなる。

「わかった。その時は俺から申請を出すよ」
「い、いいんですか!?」
「ああ!俺の可愛い教え子だから、大丈夫だって進言してやる」
「…っ!!」

言葉がない。
ただ、好きだと思う。
私が望むもの、欲しいもの、どうしてこんなにいとも簡単にくださるのだろう。私は何も渡せるものがないのに。

「足を、引っ張らないように頑張ります!!」
「おー?そうか?じゃあ、期待していようか」
「そ、それはその…!!あまり自信はありませんが…!!」
「ははは!!嘘だよ、冗談だ!…期待じゃなくて、俺はお前を信じているからな」
「は、はい!」

もう、なんで、どうして。
本当にずるい。
こんなこと言われて喜ばないわけがない。
気持ちバレてないかな?なんて杞憂なことに想いを馳せて、私はつい口角を上げた。


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