023

「これでよし!」

アカデミー入学を来週に控え、私とナルトくんは三代目様のお力を借り、なんとか入学準備を整えることができた。教材や忍具はシスイさんのをいただこうと思っていたけれど、どうやらその必要もなくて少しがっかり。

「じゅ、準備できたってばよ…」

ナルトくんはフラフラと座り込み、疲れたーと寝転がった。表とものを照らし合わせるのがどうも性に合わないようで苦戦したみたい。ナルトくんらしい。

「ねえ、ナルトくん。疲れて動けないみたいならいいんだけれど、一楽いかない?」
「え!?いくいく!!一楽いくってばよ!!」

なんだか安心してしまってお腹が空いたから、そう聞いてみる。ナルトくんは一瞬で体を持ち上げると机の上に置いてあったゴーグルを付けた。行動が早いというか、ラーメンのことになると全然違うから驚きだ。

「ながれ!早く早く!!」
「ちょっと、待ってよ!」

言い出しっぺの私より早く玄関に向かうものだから、慌てて支度をして追いかける。今度私が一楽誘う時は支度してからにしよう。



二人でお金を握って暖簾をくぐる。そこには相変わらず優しい笑顔を浮かべているテウチさん。

「おぅ、なんだナルトとながれか」
「テウチさん!ラーメンください!!」

ナルトくんと並んでカウンターに座り、テウチさんにお金を渡す。彼はあいよとそれを受け取ると早速麺を茹で始めた。

「まだかなーまだかなー」
「もぅ!今頼んだばかりでしょ!」
「だってー、おれはもう食べたいしー?」
「わがまま言わないの!美味しいのが食べたいなら待って!」
「うぅ…。最近ながれが大人みたいになってるってばよ…」

ナルトくんがぶつくさ言いながら唇を尖らせると、黙っていたテウチさんが豪快に笑い飛ばす。なんだなんだとそちらを見やると、「いーや、悪いな」と彼は苦笑した。

「女なんてそんなもんだなぁ。男の知らねえうちに大人になってやがる。ナルト、お前もすぐに置いてかれるぞ」
「え!?ながれはおれを置いていくのか…?」
「…………テウチさん?」

今にも泣きそうな顔でこちらを見て来るナルトくんに胸が痛む。思わずテウチさんをじとっと見やると、彼は悪いなぁと笑うばかりで解決する気はしなかった。

「ながれ…」
「ふぅー…。あのねナルトくん。私はたとえ何があってもあなたを置いていかない。そう、自分で決めたことだから、ずっとそばで見守るって」
「…っ!」
「それに、見せてくれるんでしょ、特等席で!ナルトくんが火影になるところ!」

ナルトくんはみるみると表情を明るくして、若干興奮気味に「当たり前だってばよ!!」と悪びれた様子もなく言い切る。こういうところがナルトくんのいいところなのだ。

しばらくして出てきたラーメンはいつもよりチャーシューが多くて、テウチさんが「さっきは悪かったな」と私にだけ聞こえる声でおっしゃられるから、ナルトくんにバレる前に食べてしまうことにした。


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