018
「髪、伸びてきたんじゃないか?」
「え…?」
サスケくんとイタチさんとクナイ投げの練習をした帰りのこと、隣を歩いていたイタチさんが私の前髪を掻き分けながらそう聞いてきた。
そういえばそうかもしれないと前髪に触れると、イタチさんの影からサスケくんがひょこっと顔を出し、「本当だ!」となぜか嬉しそうに言う。
「最近修練ばかりだったから…。放置してました…」
「修練?」
「え、いや、ちょっとしたものですよ」
修練のことを話すとどうしてもシスイさんの話になってしまうから、適当にごまかす。彼の名前を出すことは気が引けた。彼の言葉の真意もわかっていないし、おおっ広げにするには謎が多すぎる。
「邪魔じゃないか?」
「前髪ですか?」
「ああ」
「少し邪魔なので、帰ったらクナイで切ろうかなあと思ってました」
「クナイ!?」
「……」
髪なんてどうでもいいので基本的にいつもクナイで切っていたのだが、サスケくんは驚くし、イタチさんは黙ってしまうしで、多分普通じゃないんだろうと言うことは理解できた。とは言っても一人で床屋には行けないし、親が切ってくれるわけなかったし…仕方なかったとは言い訳させてもらおう。
「それじゃあ痛むだろ」
「そ、そうですけど…」
髪が痛むことをイタチさんに指摘されるとは思わなかった。彼も髪が長いからそう言うことに気を使っているのだろうか。少なくとも髪が傷んでいるイメージはない。
少し待っていろ。そう言ったイタチさんは中心街に向かって歩いていく。待っていろと言われてしまったので私とサスケくんは首を傾げながらも、その場を動かずにイタチさんに帰りを待つことにした。
しばらくすると何かを手にしたイタチさんが戻ってくる。「目を閉じていろ」間髪入れずにそう言われるから、私は大人しく瞼を下ろした。
「少し、触れるぞ」
私の額を彼の指が優しく這う。何事だと身構えていると前髪をまとめるように何かをつけられた。
「え…?」
それに驚いて目を開けると、微妙な顔をしたイタチさんと、唇を尖らせるサスケくんがいてさらに驚いた。
「兄さん!これは不器用すぎるよ!」
「すまない…ながれ」
「な、なんの話ですか?」
「貸して、おれがやる!」
サスケくんはイタチさんを押しのけると私の髪からその何かを取り、再度まとめて止めてくれた。確かにさっきよりしっくりくる。
「よし!これでかわいい!」
「これって…」
「似合っている」
違和感を感じるそこに指を近づけると、何か固いものにぶつかった。感触、用途からこれが髪飾りなのはすぐに理解する。そしてこの形は…。
「星ですか…?」
五つの尖った頂点を持つこの形はきっとそうだろうと問いかけると、「安直だったか?」とイタチさんが苦笑する。そんなことないですと首を振ると、まるで安堵するように笑みをこぼされるから、思わず私も、そしてサスケくんも笑っていた。
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