014

「火遁・豪火球の術!!」

我が一族の地下修練場。星遁のために恐ろしいほど広く作られたその空間で、私は自己修練を行なっていた。
私が練ったチャクラが炎の形となり空間を包む。まるで発現しなかった風遁も土遁をも飲み込むかのような大きさに息がつまりそうになる。
火遁なら、自信がある。一族の内の誰よりも上手くできる自信が。
熱せられた空間は肌を焼くように這った。酸素が薄れていくのは眩む視界で理解する。
このまま火遁ばかりやっていてもどうにもならないのは分かっているけれど、これしかないのだから私はこれを極める。それしかない。星遁ほどの破壊力を、規模を、この火遁で。

「火遁…」
「こんなところに修練場…?」
「きゃ!?」

今にでも吐き出そうとしていた火が、突然の声に驚いた拍子に眼前で弾ける。咄嗟に身を引いたが、ばちりと散った火花が鼻先をかすめた。一瞬のことではあったが極限にまで練ったチャクラの爆発だ、痛いに決まっている。

「ったぁ…」
「!! 大丈夫か!?」

鼻先を押さえ蹲ると、そばに先ほどの声が近付いた。涙目でそちらを見上げると、予想だにしない人物で痛みより驚きが勝る。

「シ、シスイさん!?」
「ながれ…?」

イタチさんやサスケくんはここの場所をよく知っているから納得できるが、まさかシスイさんとは。
「どうしてここに?」と聞くと、「それよりも怪我は大丈夫か?」と覗き込まれた。うちは家は皆一様に至近距離で見ると心臓に悪いほど顔が整っているので、軽率にそういうことをされるととても困る。何よりもまともな会話ができなくなってしまうから。

「え、あ、あの」
「大丈夫かぁ?赤くなるようなら冷やしたほうが…」
「だ、大丈夫ですっ、あの、顔…っ」
「やっぱり顔 痛いか…?女の子だからな、痕が残ると嫌だろう?近くに小川があったよな、そこで冷やそう」
「いえ!そんな…っ」
「ほら、いくぞ」
「あ、は、はい!」

ぐいっと腕を引かれ人好きのする笑みを浮かべられると何も言い返せない。実際ジンジンと痛むわけだし、ここはシスイさんに従うのがいいだろう。私はできるだけ迷惑をかけないようにと彼の後について階段を登ることにした。

「にしても、こんなところにあったんだな、星屑家の修練場は」
「そうなんです。星遁ってやっぱりうまく扱えないと被害が計り知れないものですから…こういう森奥の地下で修練するんです」
「ああ、なるほど。いや、任務帰りで森を通っていたら強いチャクラを感じて覗いてみただけなんだが…」

思わぬ見付け物だったな、と笑うシスイさん。その言葉でやっとここに彼がきた理由がわかった。
それにしても…強いチャクラという言葉が嬉しい。例えお世辞だとしても、褒められることに慣れていない私にとってはシスイさんの言葉はとても救いになった。

「そうだ」

もうすぐ階段を登り終えるという頃、シスイさんが何かを思いついたような声をあげてこちらを振り向いた。にっと上がった口角に高揚にも似た感覚を覚える。

「よかったら、俺に稽古をつけさせてくれないか?」
「え……?」

衝撃的すぎる申し出に素っ頓狂な声が漏れた。

稽古?
シスイさんが?
私に?
………………。


「よよよろしいんですか!!??」

焦りから上ずる声に彼はひとしきり笑って、嘘は吐かないよと私の頭を掻き撫でた。


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