011

フガクさんやミコトさんに感謝の言葉を告げ、気兼ねなくサスケくんと遊んでいると玄関から「ただいま」と声がかかる。その声に反応を示したサスケくんはバタバタと玄関にかけて行く。私も当然のようにその背中を追ったが、頭の中は疑問でいっぱいだった。
玄関にいたのはやはりイタチさんで、そうなると先ほどのシスイさんはなんだったのかと言う話になる。なんとなく感じた嫌な予感とあいまって、気分がいいとは言いづらい。

「どうした?」
「え…あ…」

突然イタチさんに声をかけられて驚く。咄嗟のことで「なんでもない」と言うことすら出来ずに言葉を詰まらせると、体調が悪いのか?と心配されて首を振る。推測でものは語れない。

「ながれ、顔色悪いぞ?」
「だ、大丈夫だよ」

ついにはサスケくんにまで心配されて、自分のわかりやすさに嫌気がさす。この不安をどこまで隠せるだろうか。何もかもが杞憂で終わって仕舞えばいいのに。

「体調良くないなら、今日泊まっていけよ!」
「え…?」

頬を少し紅潮させ、ワクワクと言った様子で言ってくるサスケくん。イタチさんもそれがいいなとなぜか乗り気で、私は必死に首を振った。

「大丈夫!大丈夫、ですっ。あの、同居人も心配しますし、今日はすぐ帰らなきゃって思ってたところ、で、だから…っ。………サスケ、くん…?」

一生懸命になって言葉を紡ぐと、あからさまにサスケくんが不機嫌になって行くのに気付く。イタチさんはそれに苦笑して、「振られたな」とちらり サスケくんを見やる。

「別に…いいし」
「サスケくん?」
「ながれはその、どーきょにんってやつがいいんだろ!じゃあもう別にいいし!!」

ベタに「ふんっ」と腕を組み、そっぽを向く彼に吹き出しそうになるのをこらえる。ダメダメ、サスケくんは本気で言っているのだから。
でも…可愛すぎる反応…これはずるい。

「ごめんねサスケくん。また今度お泊まりしたいなあ」
「本当!?」
「う、うん。本当だよ」

可愛い、なんてずっとはいっていられないのでとりあえず機嫌を取ろうと言ってみると、どうやらこの言葉が欲しかったらしく、あからさまに表情が明るくなる。更にこの反応を見たイタチさんが「現金なやつだ」と呟くのが面白くて、私は耐えきれず吹き出してしまった。

「あはははは!!」
「っ!な、なんで笑うんだよ!!」
「だって…っ!サスケくんが…!!」

単純だから、なんて流石に言えなくて、とりあえず笑ってごまかしておく。サスケくんは複雑な表情で「別にいいし、いいし…」と言ってはいるが、怒ってはいないらしい。
きっとこれも全部サスケくんなりの気遣いなんだろうな、と思うと温かい気持ちになった。
ありがとう、サスケくん。
私の最初のお友達。


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