009

突き抜けるような青空を見上げながら、私は里の中を歩いていた。三代目様に教えていただいた住所はバッチリ頭に入っている。

一頻り泣いた私に、三代目様はこれからのことを話してくださった。今まで通り星屑の家で暮らすのはあまりにも危険すぎるから、これからは目の届く場所に住んでもらうと。それに対しては全く反対も異論もないし、むしろありがたいのだが、どうやら私が住む家にはすでに人がいるらしかった。一人では何かと不安だから、と言われたが、いきなりの同居人にうまくやっていく自信はない。同い年だからと言われたことも引っかかる。なぜ私と同い年の子が一人で暮らしているのだろう。

「ここか…」

言われた住所はアパートのような場所だった。そこまで広そうではない。まあ、男の子の一人暮らしだし、これぐらいが無難だろう。

コンコン!
少し強めに扉を叩き、「あのー!どなたかいますかー?」と声をかける。すると中で人が動く気配。私は扉から離れ、身なりを正した。同い年だとしても挨拶はきちんとしなくては。

少しだけ待つと、まるで警戒しているかのように扉が開く。その薄い隙間から覗く青い瞳に私は見覚えがあった。

「ナルトくん!?」
「ながれ!!」

彼は私の名前を呼ぶなり嬉しそうに扉を全開にする。そこには可愛らしい寝巻き姿のナルトくんがいた。

「ど、どうしたんだってばよいきなり!!」

いかにも「嬉しいです」といった反応に私まで嬉しくなってくる。やはり知らない人は心配だったし、ナルトくんで安心した。

「ちょっとね、色々あって私もここに住むことになったんだぁ」
「えぇ!ながれが!!今日から一緒!?」
「そうだよ!」
「お、オレさ、オレさ、ちょーーうれしい!!」
「きゃっ!」

小躍りしそうな勢いで、ナルトくんが飛びついてくる。私はそれをなんとか受け止めた。ナルトくんを見ていると自然と笑顔になれる。勇気を出してここにきてよかった。

「あ!そうだ!なぁなぁ ながれ!腹減ってない?あのさ、あのさ、今から一緒にカップラーメン食べよーぜ!!」
「カップラーメン?」
「オレの大好物!」

意気揚々と言う彼に、親近感が湧く。なんていったって、私の好物も市販の弁当なんだから、似たようなものだろう。だから思わず笑ってしまった。

「あははは!!」
「え…?な、なんで笑うんだってばよ…?」
「ううん、なんでもないの…ふふっ。ただ、本当に安心しちゃっただけ」
「安心?」
「うん……。ありがとう、ナルトくん。これから、よろしくね?」

笑いすぎで目元に浮かんだ涙をぬぐい、彼に手を差し出す。

本当に、本当にナルトくんでよかった。
彼と一緒にいれば、しばらく母のことを考えなくて済みそうだ。
できればこのまま何も考えたくない。

もう、誰もいなくならないで欲しい。


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