ねぇ。私が死んだら泣いてくれる?
私の骨をガラスに入れて飾ってね。貴方の部屋に、美しく着飾って座らせて。

ねぇ。私を大切に愛してくれる?
貴方のその冷たい目に私を映し出して。私の微笑む姿を貴方のその切れる頭にきちんと刻み込んでおいてね。

ねぇ。私は貴方が大好きよ。ジン。愛してるの。

迂闊だった。その時の私は、迂闊。迂闊。迂闊。
うっかりあなたに惚れてしまったのだ。黒く、闇に染まっているあなたに。
長い髪を翻して歩く姿に私の眼は釘付けられた。あんなにも美しい物がこの世にはあるのか。と、そう思った。


          

FBIの潜入捜査官として赤井さんと共にこの組織に潜入し、信頼を勝ち取り、情報を集め、 

そして恋をした。
驚くほど呆気なく、私は落ちてしまったのである。



それなりに役に立ってきたはずだ。FBIにとって私は利益のある存在だったはずなのに。
どうやらFBIきっての切れ者と噂される彼にはお見通しだったようだ。
私がジンに恋をしている。と。



あと少しだった。あと少しで私はジンのものになったのに。
「赤井秀一が任務に失敗した。」
と、そう私のところに知らされたのは、愁いの銀髪が私の隣で自慢のベレッタを愛でるように撫でているときだった。

突きつけられた冷たくて、それでも熱い銃口はわずかに震える。

「残念だったな。俺の目はごまかせねぇ」

そうニヒルに笑った彼はやはり美しいと、そうおもった。
恋は盲目であるとあなたは笑うのでしょうね。

それでも、私はまだスリルと快感を求めて挑発的に笑う。
「さぁ。何のことかしら」


赤井秀一のことは信頼していた。彼は能力のある男だ。しかし、彼は決して完全ではなかった。
私を見捨て、組織を去ったのだ。
私は、先に組織の信頼を勝ち取っていた彼の紹介で組織に入れたのだから。
彼が裏切り者であると露見してしまえば、いわずもがな私は。

FBIが私を見切った。そう考えるのは必然だった。

どうして。どうして。どうして。どうして!どうして!!
これほどまでに貢献してきた私がこうもあっさり切り捨てられるのは!!

いや。きっとこれが自惚れだったのだろう。
役立たずの能無しであると判断されたから、今こんなことになっているのだ。





そこまで思考がぐるぐると回って、停止した。

カチャリ。と耳元でスライドが引かれる音がして、私の意識はそちらに向く。


「ねぇ、ジン。私はあなたが本当に好きだったのよ?」

命乞いにも聞こえる私の本音を鼻で笑い飛ばす


「じゃぁな。」

響いた銃声に彼の真っ黒な服があかく染まる。
わたしね、あなたは、いちばんそのはながにあっているとおもうのよ。

あぁ!!
あなたが私の命を奪ってくれる喜びよ!!


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