あの頃から何年、この先何年経っても、ずっと覚えててください また思い出してください
「私も、魔法使いさんと同じくらい長く生きられたらいいのにな」
「ヒカリ…?」
「わ、忘れてください」
少し困ったような面持ちをしている彼を見ると、何も言えなかった。
愛を誓い合ってから、もう1年は経った。
この頃、何となく不安なことを考えてしまう日が多くて、昨日ついあんなことを言ってしまったのだ。
今さらどうこう言っても変わらない事実なのだから、と無理矢理自分を納得させようと頑張ってみたが、やはり寂しいことには変わりない。
「駄目だな、私」
しっかりしなくちゃ、と頬をぺちぺち叩いて仕事を再開した。
「…ただいま」
「あっ、おかえりなさい。すぐご飯にしますね」
かちゃかちゃと食器をテーブルに並べていると、玄関に突っ立ったままの彼が目に入った。
「…どうしたんですか?何かあったんですか?」
「ヒカリ」
やはり昨日のことを気にしているのだろうか。
言わなきゃよかったな、とちょっぴり後悔した。
「僕は、君よりずっと長く生きる」
彼は、確かめるように一つずつ言葉を紡いでいく。
「だけど、絶対に、ヒカリのこと忘れない。…ヒカリが眠ってしまってからも、ずっと」
確信なんてない、ただの精神安定剤のような言葉だった。
でも自分が一番ほしかった、何より望んでいた一言だった。
「魔法使いさん、」
「愛してる…から」
彼の腕が体を包み込み、優しい温もりが心を満たす。
「信じてますよ」
「うん」
あの頃から何年、この先何年経っても、
ずっと覚えててください
また思い出してください
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