忘れ物 1




休日はいつも、アカリの家に行くのが日課になっていた。

「それじゃ、またね」

そろそろ帰らなきゃ、と玄関に向かう僕を名残惜しそうに見つめる彼女に言う。

「うん。また明日」

わざわざ外に出て見送ってくれたアカリは、まだ手を振っている。

紅茶色の葉が落ちている道を歩き出すと、突然彼女の声が聞こえた。

「チハヤっ!待って、忘れ物!」

振り返ると、少し慌て気味な顔をした彼女が走ってくる。

「ごめん、何か忘れてた?」

確認しようとポケットに手を入れてみたりした。

「違うよ」

え?、と訊き返そうと顔を上げた時には既にアカリの手はエプロンを掴んでいて。

そのまま引っ張られると、彼女の唇が僕に触れた。

「ちょっ、」

「チハヤ、おやすみのキス忘れたでしょ」

ぺろっ、と舌を出してからぱたぱたと駈けていく彼女を見て、今日何も荷物がなかったことを思い出した。



忘れ物

(あ、あと、「好き」って言うのも忘れちゃったな)




アカリ、策士です(笑)
がっつりアカリちゃんに振り回されてるチハヤもあり!



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