臆病な愛 2




二人の間に、夏の匂いのする風が吹き抜けた。

時は、日が橙色に染まる夕方。

周りの景色が綺麗に夕日に染め上げられる中、彼の表情だけがどこか別世界のもののようだった。

「すまない、おかしなことを言ってしまったかな」

彼はいつもの表情に戻って言った。

優しく、穏やかな。

「ううん。」

アカリは首を振った。

かけてあげられる言葉を持ち合わせていなかったから。


 


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