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「うそだ」
「お前孕ますために、1日セックスしなかったんだぞ」
「うそ」
「やっぱ精子濃かったんだな?」
「うそ、うぐっあ、ああ゙」
男に妊娠検査して、陽性出るなんてそんなの夢に決まっている。
そんなの、夢にすら見たことないっていうのに…。
さっきまでうつろだった意識が一気にサァッと冷たくなって、しっかりしていき、「うそ」って言い続けてたら、おもいっきり殴られた。
口内が、以前の暴力から切れていて、それが治りそうだったのに、傷が開いた気がした。
「ちゃんと元気なガキ産むんだぞ?お前妊娠してんだから、」
男は、喉の奥でクツクツと笑っていた。
それから数カ月、俺は外出をしなくなった。
男は、外出を勧めたり促したりするけど、殴られても俺は拒否した。
最初は信じられなかったけど、俺の腹はどんどん大きくなった。
そのかわり、外でセックスはした。
公園でもした、路地裏もした、階段でもした、人のよく来るトイレの中でも、した。
今日は、腹の中の子が腹を蹴った。
「あ」
嬉しかった。
今思えば、このころ既に俺の精神は崩壊していた。
そして、恐ろしく男に依存しだしていたのだ。
fin
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