この世は不公平だ。
何故可愛い子ばかりが優遇され、あたしみたいなのは相手にされないのか。
例えば教室の掃除中、クラス一、いや学年で一番可愛い子が机を運んでいると他の男子が集まり「オレが運ぶよ!」と馬鹿みたいにその子を取り囲んでいる。
アホか。そんなんでポイント稼ぎしようとするのがおかしい。だったらこっちも手伝えってーの。
誰のだか知らないけど、あたしが今運んでる机重いんだよ!

「手伝ってやるよ」
「!」

ああ、ついにあたしの時代も来たのね!と思ったら……。

「何だ、泉か」
「何だとは何だよ。失礼じゃね?」
「あーあー、ごめんなさい」
「手伝ってやんねぇぞ?」

声をかけてきたのは泉だったから上がりに上がったテンションが一気にガタ落ち。

「この机オレのだから重いだろー」

お前のかよ!
ろくに勉強もしない癖に何でこんなに教科書とか入ってるの?

「自分のくらいは自分で運びますよ」
「そうして」
「なつもちんたらしてないでさっさと運ぶ!そんなんだと掃除の時間終わるぞ」
「分かってるわよ!」

失礼なのは泉の方だ。

可愛い子とあたし、扱いがまるで違う。
神様はもっと人を平等にしてくれれば良かったのに。

「終わったー!」

あの子に良い所を見せようと必死な男子達が頑張ってくれたおかげで意外と早く掃除が終わった。

「ジュース買い行こうぜ」
「え、泉と?」
「嫌なのかよ」
「奢りなら」
「そのつもり」

意外な反応にびっくりした。普段の泉なら「自腹で買え」とか言うのに。
そういえば、掃除手伝ってくれたり……。今日の泉、変。
もしかして……。

「熱でもあるの?」
「…いきなり何だよ」
「いや……別に…」

おかしい。
絶対おかしい!!!

「なつ何飲む?」
「カフェオレかミルクティーで迷ってる」
「分かった」

何を納得したのか分からないけど、泉はカフェオレとミルクティーのボタンを押した。

「迷ってんなら半分こすりゃ良い話」
「……ありがと」

じゃなくて!

「泉と半分こなんて嫌よお」
「はー!?お前そんなにオレの事嫌いなの?」
「そうじゃな………」

…………違う。

「…続きは?」
「………嫌いよ、馬鹿」

あたしの顔を見て笑ってる。

「じゃあ何で顔が赤いのかなー?」

意地悪い奴。でも、そんな所が気になったりする。

「ていうかさ!気付かない?」
「何に?」

いきなりそんな事言われても困るというか、何に気付けばいいのやら。

「今日のオレ!」
「あー……」

今日の泉……。

「髪切った?」
「違ぇよ!」

今日の泉……
いつもより優しいんだ。
でも何で?

「オレなりの、ポイント稼ぎ」
「は?」
「まだ分かんない?」
「………」

ここであたしが考えてる事を言って間違ってたら恥ずかしいから言わない。例え合ってたとしても、どの道恥ずかしい。

「教室戻るか」

さりげなく差し出された手をあたしは戸惑いながらも握り締めた。

多分この時泉は笑ったんだろうけど、恥ずかしすぎて顔は見れない。

「なつはもうちょっと素直になって下さーい」
「……が、頑張ります」

遠回りして教室に向かう。
握り締めた手を離したくなくて、ずっとこうしていたくて……。

「このままサボっちゃおーぜ」
「泉が言い訳考えてくれるなら構わないけど」
「任せとけ!オレの得意分野」

向かうは教室と反対の屋上へ。


良かった。
神様はまだあたしを見放してはいなかったみたい。



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