なつが家に来て二週間経った。何でこっちに来たとか理由は言わないが、きっと何かあったんだろう。
不思議な事になつは学校の課題を何一つ持ってきてなかった。


「いつも家で何してんの?」
「え、おばさんの手伝いしたり、本読んだり」
「暇じゃね?」
「だって孝介部活ばっかじゃん」
「野球部ってそんなもんだよ」

たまには遊んでよと言われたが取り敢えず無視しておいた。オレだって遊べるなら遊びたい。

「あ、そうだ」
「なにー?」
「明日夏祭りあっから、行くか?」
「行く!行きたい!」

丁度明日は5時上がりだからその後行ける。嬉しそうに笑うなつを見て、こっちまで嬉しくなった。



「ねぇ、何食べる?」
「取り敢えず落ち着け。そして焼きそばからだ」
「えー、クレープ…」
「後にしろ!」

こうやって二人並んで歩いてると、周りからしたらカップルに見えるのかなって思ったら恥ずかしくて、照れ隠しでついつい怒鳴り口調になってしまう。

「こーちゃん怖い」
「おまっ……」
「懐かしいでしょ」
「………まぁ、うん」
「あ、花火始まるよ」

空を見上げれば色とりどりの花。そして隣には…。

「…こーちゃん」
「………ん?」
「綺麗だね」

花火よりも、誰よりも何よりも、なつの横顔が綺麗だと思った。

「ああ…」

そんな事は言わないけど。

そっと握られた手を強く握り返した。その後は二人無言のまま空を見ていた。

最後の花火が上がる時、静かになつが口を開く。

「好き、こーちゃん……」
「…オレも」


ずっと、小さい頃から好きだった。

「ありがとう」

泣きながら笑顔で。やっぱり綺麗だよ、なつ…。





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