「あたしが総理大臣になったらこの世から宿題をなくしてやる」
「お前小学生かよ」
「だってぇ!」
机の上に広がるプリント達は先週出された課題で、一週間もあるからなんて余裕ぶっこいてたらこの有様。一問も解かれていない。
「第一、田中が総理大臣になった時は宿題とかやんなくていい歳だろ」
「でも!あたしみたいに苦しんでる子はきっとどの時代にもいる」
だからどうか、貴方の清き一票をこの田中なつに…!!
「アーホ」
「痛っ」
筆箱で叩かれた。筆箱は人を叩くために生まれたんじゃないよ泉君。
「お前の成績じゃ総理大臣どころか進級も危ういんじゃね?」
「あたしはそこまで馬鹿じゃないよー!」
「じゃあさっさと終わらせろよ」
「…はーい」
プリント見ても全然頭に入ってこない。だって本当なら放課後は部活があるはずなのに、あたしに付き合ってくれてるのか。その疑問だけが頭を占める。
「おい、やる気あんのかよ!?」
「ああああります!すいません」
「ったく…」
ぶつぶつ文句言ってるのに表情は嬉しそうな泉を見てあたしまで嬉しくなった。
総理大臣になったら、君との小さな喜びがあった日でも祝日にしちゃおう。
マニフェスト
(総理大臣、なんて夢のまた夢だけど)