中学の時は「高校入ったらぜってー彼女作る」とかほざいてた泉だけど、今は「このチーム面白い」だから彼女はいらないそうな。
「昔は彼女欲しいってずーっと言ってたのにね」
「うるせっ。人は変わるんだよ」
変わったといえば変わった。でも変わらない泉もちゃんといる。
「……何だよ」
「べーつに」
「あんま見られると照れるから」
「いや見てないよ」
好き、なんて伝えたらきっとこの関係は崩れてしまうだろう。部活に専念したい泉だし、泉は気を遣って断らないはず。
「お前は彼氏作んねーの?」
「えー…まぁ、うん」
「何で?」
「いや、だって……」
泉が好きだからって言えたらどんなに楽なんだろう。
「……あのさ」
「何?」
「オレ、本当に部活やってる間は彼女作る気ないから。だから早くオレの事諦めた方がいいよ」
「………………え、」
「ごめんな」
席を立つ泉を呼び止めようとしたのに声が出ない。ううん。そんな事より、何?泉はあたしの気持ちに気付いてたの?気付いてたから、あんな事をわざわざあたしに言ったの?
いつから崩れていたのだろうか──
「……い、ずみぃ」
やっと声が出た時にはもう泉はいなくて、教室に人はいるのに、誰もいないような感覚に陥る。
「こんなのって…」
流れる涙を、誰にも気付かれないように教室を出た。
崩れたらもう……
「戻れないの?」
落ちる涙と虚しいだけの問い掛けは何もない暗闇に吸い込まれるように消える。
もう二度と泉は話し掛けてはくれない気がした。結局気を遣わせちゃったね。
「ごめん……」
伝えたかったよ。誰よりも泉が好きだったって。
彼女になれなくても、今までの友達という関係でよかったのに……。
廊下の窓から見えた空は哀しいくらい蒼すぎて、痛すぎて、あたしは目を閉ざした。
永遠にブルー
伝える事も出来ないなんて
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紫苑さんへ