凄いものを見てしまった。浜田君と誰かが抱き合ってる所を。びっくりして目が離せなかった。よく見ると、その子はあたしの友達であり、泉の彼女でもある。
「最近アイツ変じゃね?」
前の席の泉は暇になると授業中でもお構いなしに後ろを向いて話し掛けてくる。
「…そう、かな?」
「なんか隠してるだろ」
「別に、何も」
目撃した事は言えるわけないから黙ってたのに、鋭い泉に困惑する。
「ならいいんだけど」
本当の事を言えないまま静かに日常は流れていく。だけど平和は長く続かない。珍しく泉が休んだかと思えば、友達から別れたと聞く。その次の日、学校には来てるみたいだけど、姿を見せない。
「やっぱここにいた」
屋上の『立ち入り禁止』の貼り紙は意味ないと思う。だったらしっかり鍵掛けとかなきゃ。
「……何だよ」
明らか不機嫌な泉の目は少し腫れていて充血してる。
「聞いたよ」
「あ、そう」
「…」
「…」
重い沈黙が続く。来てみたはいいが、掛ける言葉もなければ慰める勇気もない。
「アイツ、浜田とデキてたんだな」
「知ってたの?」
「…やっぱり」
「あ………」
「いいよ、もう」
不機嫌な泉から無気力な泉になった。
「オレ馬鹿みてぇじゃん」
「っ…」
言葉が何も出てこなくて、黙り込んでしまう。憔悴した泉にしたのはあたしの所為でもある。
「……ごめん…ね」
虚ろな目をした泉を見ながら、あたしはただ謝る事しか出来なかった。
出口が見えない
やっと出口だと思ったそこはまた新たな迷路の入り口だった
あたしだって、泉のこと好きだったんだよ…