時計の針が夜の11時を指す
もうすぐ、彼が来る


真夜中の来訪者


いつからだろうか、ティキが夜になるとうちに来るようになったのは。きっかけはティキが道で倒れてたのをあたしが介抱したのが始まり。

「よっ!」
「今日も時間通りね」

ティキがどんな人なのか全然知らないし興味ない。あの時倒れてた事も詳しくは知らない。ティキが話そうとしないから聞かないんだけど。

「今日で来るのは最後だから」
「そう」
「反応薄いなー」

うちに来ても何をするわけでもなく、ただ1、2時間ソファーに座ってるだけ。ティキが言うにはうちのソファーは世界一の座り心地らしい。

「寂しくない?」
「……ちょっと、ね」

毎日それが当たり前だったから急になくなるというのは少し物悲しい。

「オレも」

今更、本当に今更なんだけどティキってかっこいいんだなって。最後に思うなんてあたしはなんて馬鹿なんだ。

「二度と会えない?」
「そうだな、会えないと思う」
「じゃあなんかちょうだい」
「なんかって?」
「……ライターとか?」

自分で言ったのはいいけど何も考えてなかったら困ってしまう。何であんな事言ったんだろう。

「残らないけど、」
「……っ」

抱き寄せられ唇が触れ合った。タバコと、アメの甘さの長い様で短いキス。

「忘れんなよ」
「…ティキも、ね」

さよならの代わりは二度目のキスで


きっと、何年経ってもあなた以上の人は現われないと思うの



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