痛い、気付いた時には遅かった。体が動けない、というかオレ、縛られてる。ソッチの趣味はないがこの状況そうは言ってられないみたいだ。

「なん…なんさぁ」

口の中は鉄の味が充満していて気持ち悪い。いくら自分の血でも嫌なものは嫌。

「起きたんだね」
「……誰だ?」

一人の少女が目の前で笑ってる。見覚えはない。

「あたしより自分の事気にしなよ」
「オレはお前が誰だって聞いてんだよっ!!」
「うるさいなぁ」

少女の手には鋏。錆付いていて鈍い音を立てる。

「人の足の指を切断しちゃうと歩けなくなるって本当かな?」

ニィと笑う顔は愉しんでいるみたいで、冷ややかな鋏がオレの足の親指に触れた。

「やめっ…」

恐怖が全身を包む。抵抗しようにも体は動かない。待っているのは地獄しかないみたいだ。

「オレをどうするつもりさ」
「あたしの玩具にするつもりだけど」
「ふざけんなっ…!」

口では幾らでも言えるが体が動かないんじゃあ丸で意味がない。こんな状況じゃなければ、男と女、力の差は歴然なのに。

しかしこの少女は一体何者なんだ。オレを捕まえるという事はアクマかノアか。
どの道伯爵側のものだろう。

「あたしね、ラビの事好きなんだ」
「…オレの名前っ」
「本名じゃあないでしょ?」

───オレの何を知っていると言うんだ?

「あたしは知ってるよ。ラビの仕事の事もアクマだっけ?その事もノアだって伯爵の事も、ね」
「…何者だよ」
「あたし?あたしは」

鋏を持つ手がまた動き始める。もうオレに未来はない。

「ただの人間、だよ」


それは、この世でもっとも残酷なイキモノ──



秘 め 事 遊 戯
ラビが好きで好きで
たまらないんだぁ……




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