無理だ。勝てるわけがない。もう分かったでしょ?あたし達に勝ち目がない事くらい。
戦場は混沌としていた。襲撃されたのは二時間程前。予期せぬ襲来に戦闘準備が出来てないまま敵に向かう。
そんな状況もあってか、教団側はもうボロボロだ。
誰が死んで、誰が生きてるのか分からない。
はっきり言おう。絶望的。
「なつ!何休んでるんですか!休んでないで戦って下さい!!」
ほとんどの教団の人間は勝てないと諦めている中、アレン・ウォーカーは傷だらけになりながらも応戦している。
「戦ってって言われても」
すでにあたしは右腕がない状態で、肋骨とか結構折れてる。立つのも精一杯。
まだ戦えるのが凄い。ウォーカーに乾杯。
「諦めちゃだめです!希望を持って」
戯言を。
この状況で、希望、だなんて。無理な話だ。
「…ウォーカーには希望があるのか?」
ふと、疑問に思った。
「ありますよ」
「気になる」
「…教えるから、戦って下さいね」
ニッと笑ったウォーカーにドキッとしたあたしはまだ余裕があるのだろうか。
「ボクはなつが好きなんで、行った事ない国になつと行きたいんです」
「………それが希望か?」
「はい」
希望というより夢だ。
でも、おかげで心が動いた。
───イノセンス、発動
あたしのイノセンスはある言葉を口にするとその効果を発揮する。
「ウォーカー、あたしもウォーカーが好きだ」
希望を捨てない、その真っ直ぐな瞳が。
「だから、恨むなよ」
「…なつ?」
『Goodbye…』
それが効果を発揮する為のキーワード。
あたしのイノセンスは大陸を一つ消せる力がある。
もちろん、使った事はないし、その事を知っているのは極僅か。
これを使うのは自己判断だが、本当に危ない時。つまりは最終兵器のようなもの。
全世界の為に大陸一つ消えるのもどうかと思うが、アクマを、伯爵を倒すにはもうこれしかないから。
ウォーカー、生まれ変わったらウォーカーの希望をかなえようじゃないか。
世界が終わる10分前のやり取り
(世界、は言い過ぎた)