願わずにはいられない
「これからもさぁ、オレの手握っててよ」
「は?」
差し出された右手を、どうしていいのか分からなくて、これはあれか、握れ、って事だよね。
「だぁから!握ってってば!!」
「なんでちょっとキレてるのよ」
「なつが手握ってくれないから!」
「いや、分かったから」
それは分かったけど、これからもって…。
「なんか重い」
「なつちゃん冷たくね?」
「ラビが変な事言うから」
「変な事って…酷いさぁ…」
そんな落ち込まなくても、と思ったけど、彼女に「重い」なんて言われたらそりゃ落ち込む。
「だっていつ死ぬか分かんねぇじゃん?」
「ちょっと」
「事実だろ?」
あたし達はいつだって死と隣り合わせだ。最近は特に任務や戦闘が増えた気がする。
「だから、死ぬまで手を握ってて欲しいんさ」
「それって……」
ラビはその言葉の意味をちゃんと理解して言っているのだろうか。あたしには、プロポーズの言葉にしか聞こえないんですけど。あ、プロポーズは大袈裟かも。
「……嫌?」
「嫌じゃないけど」
ラビはブックマンで、あたしはエクソシスト。ラビはずっと此処にいるわけじゃないのに。
いつかは別れが来るのに。
「死ぬまで、は無理だけど、ラビがあたしの前から消えるまでならね」
「………うん」
ちょっと寂しそうに笑うラビ。あたし、言っちゃいけない事言った。
「長く居すぎたな」
その言葉を聞こえない振りしてラビにキスしてやった。
「…だいたーん」
「たまにはあたしからってのもいいでしょ?」
「悪かないね」
少しでもラビの寂しさを取り除けるなら、なんだってしてやろう。
どうか、これ以上君が寂しそうな顔をしませんように