いつか、こんな日が来るんじゃないかって、ずっと思ってた。
「もう行くの?」
「神出鬼没ですか、なつちゃん」
「ずっと此処にいたわ」
教団を去ろうとするラビを少しでも引き止めたかったから、ラビが出ていきそうな場所で待機してた。予想通り来た事が少し悲しい。
「皆に挨拶していかないの?」
「いやー、だって、オレ『ラビ』じゃなくなるし」
「関係ある?」
「ははっ」
渇いた笑いをするラビは黙って出ていく気だったんだ。今まで一緒に戦ってきた仲間であり、あたしの恋人でもあるのに。
「あんまりだわ」
ラビが本名じゃない事はこの前教えてもらった。本当の名前は捨てたらしい。そんな話をあたしにするくらいだからきっと何かある、そう思ってた。嫌な予感は的中する。
「悪いとは思ってるさ。でもオレが決めた道だから」
「何かっこつけてんのよ」
「ごめん」
「………」
謝られると何も言えなくなるの知ってて言うんだ。ラビはずるい。
「もう会えない?」
「自主的には会えないけど生きていればいずれ会えるさ」
「うん……」
これはきっと別れ話。認めたくないんだけど、そうはいかないみたい。
「元気でな」
「ラビも、ね」
さよならをお互い口に出さなかったのはきっとまた、会えると信じてるから。
──生きていれば会える
ラビがそう言ったんだからね。忘れないでよ…。
とりあえずさよなら