振られた、というかついに音信不通になったあたし達。高校が別だからなかなか会えなかったけど、それでもいいって言ったのは彼のほう。なのにどういう事か、もう半年も連絡がない。
「一ヶ月連絡ない時点で諦めりゃよかったんじゃね?」
「テストとかで忙しいかと思ったんだもん」
「それでも半年って…」
倉持が呆れたような顔をして、溜め息ついたから、机の下で脛の辺りを蹴ってやった。
「痛っ、お前、俺野球部だぞ?」
「あたしはこれでも悩んでたんだよー!」
「…だったら会いに行けばよかったじゃん」
「……」
高校が違うからって、別に遠いわけじゃない。むしろ比較的近い位置にある。
それでも会いに行かなかったのは、怖かったから。
「別れようって言われるのが嫌だったんだよねー…」
でも連絡がないのもそれはそれでつらい。
「新しい男見つけてそいつ忘れれば?」
「簡単に言うね」
「例えば俺とかさ!」
ヒャハハと変な笑い混じりで言う倉持は本気なのか冗談なのか分からない。
「倉持は嫌。軽そう」
「はぁ?軽くねーよ、俺。むしろ一途!」
「うっそだあ」
見た目からして軽そうじゃん。笑い方とか。
「だって俺、入学当初から好きな奴いるもん」
「え、誰誰?」
「………鈍っ」
「何よ」
「今までの会話の流れで気付けよ」
さっきより少し頬を赤くした倉持が、あたしを見つめる。
つまり、それって…
「………あたし?」
「遅ぇよ」
気付かなかった。自分の事で精一杯だったから。
「え、こういう時どうしたらいい?」
「俺に聞く?……まぁ、田中のしたいようにすればいいし」
「…ずるい」
「無理に付き合わなくてもいいから。いつか俺と付き合いたいと思ったら、そん時はよろしくなっ」
あたしの髪をくしゃくしゃにして、多分照れ隠しで「ジュース買ってくる」と言って倉持は席を立った。
もう既にあたしの頭の中は倉持でいっぱいというのに気付くのは1分後の事──
二人が幸せになる方法