サプライズなんて期待してない。そんな事する人じゃないって分かってるから。それでも付き合って一年の記念日は何かしてほしいと思うのが女心。
「そんな訳で、あたしすっごく期待してるから」
「何を?」
「サプライズを」
一回あたしの顔を見てすぐに視線をスコア表に移した御幸。彼女よりスコア表のがいいのか、コラ。
「…サプライズって言われてもね」
「何?」
「それを俺に言ってる時点でサプライズにはならないだろ」
「………」
多分御幸はあたしの事を頭がちょっと弱い子って思ってる。
「サプライズしてほしいならさ、いい加減俺の事一也って呼んでくんね?」
「無理!」
「即答かよ」
御幸は御幸。今更一也なんて呼べないし、一也ってキャラじゃない。
「気が向いたらね」
「じゃあ俺も気が向いたらサプライズしてやる」
「ずるい」
「ずるくない」
「ずる「チャイム鳴った」
あたしは釈然としないまま自分の席に戻った。御幸は笑ってる。それが気にくわなくて教科書を勢いよく机から出した時、ゴト、という音がした。
「あれ…」
落ちていたのは小さな箱だった。その箱にはあたしの好きなブランド名が書いてある。それだけで中身は予想できた。前に雑誌を見て欲しいと言っていた指輪。でも値段がちょっとするから買うのを諦めたのに。
御幸の方を見るとまた笑ってる。でもさっきと違って今度は優しい笑顔。
授業中にも関わらず泣きそうになる。泣かないけど。御幸にしては上出来なサプライズ。
決めた。ちょっと恥ずかしいけど御幸の事頑張って一也って呼ぼう。
「お気に召されましたか?お姫様」
「どんなキャラよ」
「いやー、たまにはね」
「…でも、ありがとう。一……也」
「おぉ!!」
「…ごめん、やっぱ無理だっ!」
「しょうがねぇー」
サプライズはいいからこれからも、あたしのそばにいて下さい。
…………なんて、そんな事言えないけど。
君に出会えた事が人生最大のサプライズ
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白石さんへ
『聖人。』一周年記念に贈呈