「祐希、あたし、」
「待った。今いい所」
久しぶりに祐希と遊べると思ったのに、うちに来るなりゲームを始めだした。
おいおい、彼女を差し置いてゲームに夢中な彼氏ってどうなんだろう。言ってしまえば今家にあたし達だけなんだぞ、と。
「よし、レベル上がった」
「…………」
あたしは諦めて春にメールした。春ならすぐ返事返ってくるから暇にならない。
だけど、こんな時に限ってメールが返ってこない。暇。暇すぎるよ祐希君。
ベッドの上でゴロゴロしてるあたしには目もくれず、画面ばかり見てなんて、そりゃないよ。
暇すぎたあたしは、睡魔が襲いそのまま眠りに就いた。
「なつ、なつー」
「……んー?」
「起きて」
「えー……」
意識は半分夢の中。正直まだ寝ていたい。
「起きないと、」
「ん」
「襲っちゃうよ」
一言。たったその一言で完全に目が覚めたあたし。それに、顔が異様に近いから余計ね。
「何言ってんの!」
「だってなつ寝ちゃうから」
「それは祐希がゲームしてるからでしょー?」
「もうクリアした」
「………へ?」
どうやら5時間近く寝てたあたし。祐希がやってたゲームはあの時がラストダンジョンだったからとっくにクリアしてたみたいで…
「じゃあ、その間何してたの?」
「…闘ってた」
最初、その意味が分かんなくて「ゲーム2週目かよ」とか思ったけど、よく考えたら若い男女が部屋に二人きり。……よくまぁ、勝ち抜きました。
「悠太にどうしようってメールしたら、とりあえず起こせばって来たから」
「成る程」
それであんな起こし方。
「だったらもっと早く起こしてくれれば」
「それは、」
黙る祐希。こればかりは考えても分かんなかった。
「まぁ、いいや。もう夕飯時だからご飯作ろっか」
「賛成」
「何食べたい?」
「…………………」
これは分かった自分が恥ずかしい。でも言わない。
「…しょうが焼きね」
「わーい…」
草食に見えて意外と肉食の祐希の為に腕によりをかけて作ってあげようじゃない。
起こさなかったのは、寝顔が可愛すぎたからっていうベタな理由
素敵な午後を二人で