朝から降っている雨は止むことを知らないのか、夕方になっても降り続いた。
でも確か今日の天気予報で、夕方には雨は止むでしょうって言ってたはず。見事にハズレだ。
最近の天気はずっとこんな感じだ。暗い雲が空を覆い、晴れ間を一切見せようとはしない。
「どうせなら虹が見たいな」
思わず声が出てしまった。
周りに誰もいなくてよかった…なんて安堵した瞬間、
「オレもそれ思った」
「あああ浅羽君!」
そこにいたのは、うちの学校のちょっとした有名人の双子の兄、浅羽悠太君。
あたしの気になる存在。
「田中さん、だよね?帰らないの?」
「あ…えと………」
実を言うと、帰れないのである。先週買ったばかりの水玉模様の傘は誰かが持っていってしまったらしく、あたしは昇降口にかれこれ15分はいる。
「もしかして、傘ないとか?」
「……うん」
「じゃあ…」
そう言って、浅羽君は折畳み傘を取り出した。
「入る?」
「ええええええ!?」
「あ、嫌?」
嫌なわけない!けど、素直に入る勇気もない。
「確か方向一緒だよね」
「うん」
「決まり。早く帰ろうか」
弟の祐希君はマイペースな人だと聞いてるけど、やっぱ双子だ。
「…お邪魔します」
思った以上に傘の中は狭くて、あたし達はかなり近い。
「大丈夫?濡れない?」
「う、うん。平気…」
あたしは平気だけど、よく見ると浅羽君の肩……濡れてるじゃん!
「ごめんなさい!やっぱあたし……!」
「いいよ。オレがこうしたいの」
「え、」
「大丈夫だから」
浅羽君の優しさに思わず涙が出そうだった。(実を言うと、傘が無いと知った時にちょっと泣いたけど)
あたしの家まで会話といえる会話はなかったけど、別にそれは嫌じゃなかった。
「今日は本当にありがとう」
「風邪引かないように」
「浅羽君も…」
「それじゃあまた明日」
「…うん」
別れを告げて、あたしは真っ先に自分の部屋に向かった。
浅羽君の隣に居る時よりも、今の方がドキドキしてる。相合傘をしてしまった事もだけど……
確実に言えるのは、明日どんな顔をして会えばいいのか分からない事。
オレがこうしたいの
それって、つまりさ……
雨の日の魔法