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▼ 金曜夜のルーティーン

金曜ロードショーが終わると、ようやく週末が訪れた気分になる。
来週の予告へと画面が変わったのを眺めながら、コラソンは煙草に火をつけた。ソファーの隣には猫が前足で顔を舐めるのと同じ仕草でローが目を擦っていた。
「ロー、眠いか?」
「まだ平気」
そう言いながらも既に半目だ。もう五分もすれば意識は夢の世界に飛んでいるだろう。コラソンは、まだ半分以上残っている煙草を灰皿に押しつけると、パジャマのローを抱き上げ、向かい合うように膝の上に乗せた。
「なぁ、ロー。いつものチューと大人のチュー、どっちがいい?」
「……しないで寝る」
「それは無し」
ローは不満気に頬を膨らませた。これも先週と同じ流れだ。
コラソンとローは金曜の夜にいつも同じことをする。夕飯を食べ、金曜ロードショーを鑑賞し、肌を重ね合う。
プロ野球選手がホームランを打つ前にバットを構えるように。
ラグビー選手がゴールの前に指を組むように。
一つのルーティーンなのである。
「本当にしねぇの?」
「しないって言ってんだろ! 毎週毎週あんなことされて、体痛ぇんだよ!」
「あんなことってどんなことー?」
「だから、…………っ!」
コラソンの意地の悪い質問に、真っ赤なってローは口ごもる。わざとらしい笑みで首をかしげると、言葉ではなく張り手がパンッ! と頬に返ってきた。容赦はなかった。これも先週と同じ。やれやれ、とコラソンは羞恥で不貞腐れたローを横に倒し、上に乗っかった。暴れるローの両手をコラソンが片手で上に固定すると、怯えた子鹿のように身体を震わせる。ボタンを外し、裾から手を滑らせてローの下着を脱がしていく。「自分でやるから」と文句を言われたが、聞いてないふりをした。あっという間にローの上半身は外気に晒され、蛍光灯の明かりが白い肌を光らせた。
「……コラさん」
「どうした?」
「ま、……まだチューしねぇのかよ」
「どっちのがいいんだ?」
「だから……」
か細い声でローは顔を背ける。
そうして結局、先週と同じ台詞を口にした。

「大人のほう……」


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