小説 | ナノ


▼ 黒い手袋

黒い手袋は貞淑というが、その男にはあまりにも不釣合いだった。


***
黒い革の手袋に白濁の液体がこびりついている。
その粘度を確かめるかのように指を擦り合わせてみると、妖しく糸を引いた。
ぐっしょりと濡れて色が変わった手袋を眺め、「新しいものに変える必要があるな」とヴェルゴは自分の膝の上で震えるローに呟いた。
青く充血した痣や切り傷が白い肌を、鮮やかなほど痛々しく飾っている。
手袋を取り、ヴェルゴがローの下腹部に手を伸ばすと、ローの口から小さな悲鳴が漏れた。
「も、ムリっ……、ッ、出な、い……っ、て」
「関係ない」
「ほん、と、……か、ら……やめッ、!」
 赤く充血した先端を指先で掠めると、透明な液がじわりと溢れてくる。
何度も擦られたせいで沁みるような痛さが腰に走った。
「やだっ、ひ、だい……ッ!」
 快感よりも痛みが先行して勃たない性器を容赦なく掻くヴェルゴだったが、しばらくしても何の反応も無いソレに気づくと手を止めた。
ぐずぐずとしゃっくりをあげるローを降ろし、ヴェルゴが立ち上がる。
ようやく終わったのかとローが思った次の瞬間、両足が割られ、ぬるりとした感触が下半身を襲った。
新しい刺激に腰が跳ね、身をよじって逃げようとするも相手の力の方が強くて動けない。
ウェルゴがローのモノを口に含んでいるのに気づいたのは、太ももにさらりとした髪の感触がしたからだ。
「っあ、あああッ!」
先程までの乱暴な手つきとは違い、優しく舌で刺激させられ、苦しいほどの甘い痺れが頭を蝕んでいく。舌先で鈴口を割るようにつつかれ、後ろに逃げようと腰が震えた。
喉奥で締め付けられると、たまらず両手で引き剥がそうと頭を掴むと、至極あっさりと手首を掴まれて骨が軋む。
これ以上、もう絶頂は迎えたくないのに体だけが追い詰められていく。
「やだ、やだ、やだっ! も、やァッ!」
泣き喚いても無駄だと知っていても、そうせずにはいられない。
チカチカと視界が弾けだす。いっそこのまま意識が飛んでしまえれば楽なのに。
プライドも何もかなぐり捨て、ただ泣きながら快楽という名の暴力を享受する自分は、あまりに惨めだった。
「や、ぁ、ッああ、あぁあっ!」
一際強くヴェルゴが食いつくように喉奥で締め付けると、微量の精液が口内に放たれた。
躊躇いもせずそれを一口で飲み込み、余韻に震えるローに低い声で言った。「まだ出るじゃないか」
「む、……り、……も、ホント、に……」
「嘘をついたな」
 絶対零度の声色と共にヴェルゴの右腕が黒く硬化する。
「ッ、ひ! あ、や、だ!」
「叫ぶな」
 お前の声は耳に障る。そう告げて、武装された手がローの顔に振り下ろされる――その前に、別の手がそれを止めた。
「もういい。許してやれ」
 白い歯を見せる彼をヴェルゴはしばし見つめた後、黒褐色の肌は溶けるように元の状態に戻った。
「君は甘い。ドフィ」
「フッフッフッ! なんてったってローは可愛い俺の右腕だ」
「それにしては反抗的すぎる。しつけ直さないと噛み付かれるぞ」
 それもそれで面白い、とドフラミンゴが笑うと呆れたため息がまた一つ零れる。
それでも、これ以上は無駄かと諦めたのか、未だに全身で息をするローを冷たく一瞥するとそのまま部屋から出て行った。
虚ろな瞳で自分を映すローの肌を指先でそっと撫で上げると、「んっ」と苦しそうな吐息が鼻から出た。
「ヴェルゴの仕置は疲れただろう?」
ローの耳にわざと息を吹きかけたところで、ローが彼の真意に気づいたらしく、「……やだ……」と静かに涙を落とした。
「これ以上、は、無理だ……ドフィ」
声を上げて拒絶するほどの力は無く、「優しく愛でてやる」とドフラミンゴが手を伸ばす。
もう一度、ローの身体がベッドに沈み込む。
捨て置かれた手袋はすっかり冷たくなっていた。

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