小説 | ナノ


▼ 音遊び

「言葉って不思議だと思わない?」
「いきなり何ですか、変態色欲偶蹄類。さっさと仕事を終わらせてくださいよ」
そう言うと近くで跳ねていた従業員の兎の一匹を鬼灯は膝に乗せて撫ではじめた。
「よくも言ってくれたよね。薬の納期わざと遅れようかなー…」
瞬間、鬼灯は片手で座ったまま白澤の顔面に向けて投げつけた。
「何ふざけたこと言ってるんですか。
とっくに納期なんて過ぎてますし、迷惑窮まりないですね」
「……ねぇ、さっきの話の続きなんだけどさ、
僕らが今こうして話す言葉は元々音の羅列なんだよ」
「よかったですね。はいはい」
さらりと受け流した鬼灯の背中に嫌な奴と呟いた。

「つまり、僕らは言葉じゃなくて音を繋げて伝えあっているわけ。
例えば『あ』の次に『い』を発音したら『愛』って言葉になるように。
そう考えると面白いと思わない?」

「――今、私と白澤さんでやっているしりとりは、音遊びということを言いたいんですね。まとめると」
くだらないと続けた鬼灯に白澤は「意味分かってるの?」と返す。

「のろのろしてないでとっとと貴方は薬を作るべきです」
ため息をついた鬼灯の耳元に白澤はそっと小さく囁いた。



「…………好き」



しばしの静寂の後、鬼灯もそっと告げた。



「嫌い」



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