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▼ きみに、恋をした


どうして。
どうして、貴方は私に惚れたのでしょうか。
情事の後に尋ねた言葉。
火照りが残る身体へと
貴方は手伸ばし抱き寄せる。

そんなの愚問じゃないか。
熟れた桃が木から落ちるように
僕はお前に堕ちてったんだ、と。

それなら、質問を変えましょう。
貴方はいつから私のことを?

そう聞くと、貴方は笑ってこう言った。
お前と出逢った瞬間から、ね。
なんだ、それはと思わず顔に出たようで、
貴方は優しく言葉を付け足す。
お前は忘れてるだろうけど、僕はずっとお前が好きだったよ。
首を傾げる私に貴方は
「お前がもっと小さい頃に」と
私の肩に顔を埋めた。


「裁判の話を伺ったときですか?」

「いいや。ずっと前のことだよ」

「……? どこでお逢いしたんでしょうか」

「さぁ? 昔のことだから、それは忘れちゃったな。でも覚えてる」

「忘れたのに覚えてる?」

「うん、そう。記憶ってそんなものさ。でも出逢った瞬間、僕は確かにお前に落ちたよ」

ふふふ、と笑うその声は
何だかひどく優しくて
思わず「気色悪い」と答える。

真っ赤な頬を見られぬように、顔を背けた状態で。



<きみに、恋をした>

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