外の気温は30度越え。
ガンガンに照りつける太陽。紫外線。

この冷房の効いた部屋は名前の声とGペンの走る音が止まず、それが五月蝿い蝉の声と相まって奇妙な空間が出来上がっていた。


「――それで、うちの親ったら私を置いて旅行に行くとか言うんですよ。確かにね、たまには2人っきりで羽根伸ばしてほしいというか別に反対はしないですけどさすがに突然過ぎるっていうか」


それまで規則的に響いていたペンの走る音がぴたりとやむ。


「…その間君はどうするんだ?」


露伴は振り返る事無く言った。

一瞬問われた事も意味も理解出来ず名前は目を白黒させたが、やがてうーん…と考え込んだ。


「ま、そりゃあ1人は寂しいですけど…お金は渡されたし自分が生活する範囲なら家事も出来ますし」


「なら僕の所に来ればいいじゃあないか。」


そう言い放つとまたペンが音を立てて走り出す。




「………はい?」


「一般論からして女子高生が長期間家に1人なんて危険極まりないだろ。夏休みの間くらい僕の家に置いてやる。」


「…本気ですか?」


「冗談は嫌いじゃあないが、僕はあまり言わない」


「……………」


それは名前にとって予想もしなかった提案…いや寧ろ強制。

どうせ相手にされないのだからその背に向かって延々と愚痴れればいい、ただそれくらいの気持ちでこんな話をしていたというのに。


「それとも、僕の家に住むなど願い下げか?」


振り返った露伴の顔は涼しいながら何処か楽しそうだ。


「えーと…じゃあ、お世話になります…」


それを聞くとにやりと笑ってまた原稿に向かった。


――…名前はとんでもない選択をしてしまったのではないかと帰路につきながら思った。









お世話になります。
→To be continud...?