「…んー」
「名前?ど、どうしたんだ」
私に抱きついているセッコがわかりやすくうろたえる。
感情の変化が伝わるなんて、ほんとうに動物みたいだ。ああ可愛いセッコ。
…でも。
「ごめん。少しの間…は、離れて、セッコ」
「!??どっどうしてだ?なあ!名前!」
ああ心苦しい!なんて可愛いのあなたは!
こんな言葉で足をじたばたさせて、抱きついている腕に力を込めて!
けれど!
心苦しくも私はセッコを振り払って立ち上がる。
そして台所へ向かった。
「セッコを見てるとお腹減るのよ〜!」
そう。お腹が減る。
自分でも理屈がわかんないけど何故か空腹になる。
確かにセッコは美味しそうだけど(これは食人的な意味じゃないわよ、一応)そうじゃない。
「腹…減る?」
「うん。腹減る。あれうわ、冷蔵庫なんもない。先生昨夜の魚食べやがったな」
「じゃあ、う、おれ食べたらいい!」
「ごふぉう?!せ、セッコ!?」
「俺も、おれも名前と居ると腹が減る、だから名前から甘いのもらう!」
あ、そういう作戦…ずいぶんとまあ口がうまくなったものねセッコ。
動揺した私が馬鹿だった。
…なんて考えてたら、
肩に手を置かれたかと思うと、首筋に口付けられて一斉に鳥肌が立つ。
「ひっ!?せっせせせセッコ!?」
「や、やっぱりだ。名前、甘い」
「ちょっちょ、えッや……」
荒い息と共に首筋をレロレロと舐め上げられ体全体がぞわぞわする。
到底あのセッコにされている行為だとは思えず混乱するばかりだ。
どういう状況。ねえこれどういう状況。
「甘い、名前、美味しい」
「ふ、ぅ…ぁ、セッコ、ダメ…ッ…めっ…」
「…やだ。もっと甘いのほしい」
「ん、うぐ…ぅ…」
そのままごく自然に、私の口内へセッコの指が侵入してきた。
それを舌で舐め上げてやるとどうだろう。なぜか甘さが口に広がるではないか。スナック菓子でも食べてたのか?
「どうだ、名前、甘いか?俺、どんな味だ?」
「はぁっ、は…あ…甘い…」
「甘いのか!そ、そうかあ!」
その隙を見て私はささっとセッコの腕の中から逃げ出した…というかセッコをつっぱねた。
だってこれ以上やられたら…って私、これ以上って何よ。こんな可愛いセッコに何を求める気。
「!!名前…?」
「…セッコ!甘いのあげるわ!ほら3個?3個がいい?」
「甘いのー!」
「…はあ…」
ああ。つまりだ。
私はなんだかんだ可愛い可愛い言いながら彼を性的に見てたってわけだ。
…あれ、つまりセッコは私にとって…
いや、美味しそうってつまり私それは…
――考えるのをやめた。
マイスウィート
(何?セッコへの感情がよくわからなくなってきた?こちとら精神科じゃあない、あと魚の事も知らん)