「おにいちゃん」


「…民衆の前ではやめておけよ」


「おにいたま?」


「ない」


「にーにー!」


「…可愛いが却下だ」


「結局お兄様とかじゃん、つまんないのー」


「つまらなくて結構だ。全くこれから城下を見回るというのにこの脳天気娘は…!」


戦いと農業がなによりの取り柄な成り上がり田舎娘。
久々に屋敷へ顔を見せたと思えばとっとと任務を受けたいと言い出す始末。
そうしてしびれを切らした兄――レムオンに捕まり城下の見回りへと連行させられたという訳だ。

しかも今度は支度をしながら兄への呼称について考え出すときた。
これから民の前に出るというのに何を考えているのか、レムオンは思わず頭を抱えた。





なんやかんやで支度を済ませ外へ出ると早速人だかりが出来る。
レムオンにとってはそんなに珍しい事ではないが――どうも今日は妙な気がする…。


「おい、名前…気をつけろ。なんたってお前は……」


『ハァハァ!ハァハァ!やっぱり妹君かわいっすなぁ!』
『おれたちの妹がこんなに可愛い訳がない!』
『名前様ー!おにいちゃんって言ってくださーい!』


「え?おに」


その刹那、レムオンは名前を抱え人だかりを蹴散らし屋敷へと駆け込んだ!


「お、おいぃぃ!おまえなんか変なファン層出来てないか!?」


「へ?」


「ていうかお前も答えるな!それ以前に外出を控えろ!」


「冒険者に外出控えろとかお兄ちゃん鬼だー」


「いいから!兄の話を聞きなさい!」


「変なお兄ちゃん」


「変なのはお前の支持者だ…!!」
(そうか、妹キャラには濃いファンができるのか…警戒せねば…)










レムオン殿の妹がこんなに可愛いわけがない
オチなどない