「先生、私、病魔かも」


「………え?」


彼の前に仁王立ちする彼女はこう告げた。








「恋の病とかベタなのはやめとけよ、名字」


「うおぅ藤くんいつからそこにィィ!!?」


「さっきから居るだろ。つかそういう事言うと…」


呆れる藤くんはさておき。
さっきまで書類を必死で片付けてた(愛しの)ハデス先生は、やっぱりというかなんというか血相変えて立ち上がる。


「びっ病魔だって!!!名字さん、おおお落ち着いて話して欲しい!最近変わった事とか!えーとえーとそれから…!」


「お前が落ち着け」


そう…度を越す心配性のハデス先生なら、こう言えば絶対食いつくと確信していた。
しかも毎日顔を見てるはずの私がいきなり病魔に掛かったと分かれば尚更だ(ちょっと先生の顔が近すぎるのが照れるけど)


「そ、それが…私、先生を見ると」


「ぼ、僕を見ると…恐ろしすぎて寝れない!?」


「えっちょ、そんな事言ってな……」


「それは恐怖からくる類かもしれない…ああでも…ぶつぶつ」


「ちっ違いますよ!せ、先生を見るとですね、胸が張り裂けそうなんです!」


「……………………」


思わず立ち上がって主張してみたがこれはさすがの鈍感ハデス先生にも分かりやすすぎただろうか。
藤くんは腹抱えて爆笑してるこいつ殴りたい。


「……それは風邪か…その、成長期によるものかも…」


「な、ななななんでそうなるんですかー!!ていうかなんで先生がちょっと照れてるんですか!」


「い、いやいやいや確かに僕は保健の先生だけど…女子のそういうのは、あの……」


「だんだんと話が逸れてるし!てか藤くんいつまで爆笑してんの!!」



また振り出しに戻るのは1時間後。










あなたの知らない病魔
(…はーお前ら面白すぎ)(私は本気だってば、ねーハデス先生!)(え!?えっと…)