「やっ、みーんな!」


名前が病室の敷居を跨ぐとそこには愛する仲間達の姿がある。
怪我をし、キャラバンに乗れなくとも病院から応援してくれる仲間達が。


「あっ、名前さん!」


「や、宍戸。変わりなさそうね。」


「聞いたよ、またエイリア学園に勝ったんだって?」


「あ、半田。」


「残ったみんなは元気か?」


「うん、おおかたね。…でも、吹雪が元気ないみたい。」


「吹雪って…前に来たアイツか。アイツ、豪炎寺に代わるエースストライカーだろ?大丈夫なのか?」


「…わからない。けど、今は吹雪も、私達も頑張るしかないからさ。」


「……ああ。」


名前が意志の強い瞳で前を向くと、半田は強くうなずいた。


「…………ところで、半田…」


「ん?」


先程とはうってかわり、下を向き頬を薄く紅色に染めて名前は言葉を詰まらせた。


「…………あの…」


「?」


名前がうつむいた理由が分からず半田は首を傾げるばかり。
その様子を見て後輩達もさすがに焦った。


「ちょ、ちょっと半田さん!空気読んで下さいよ!」


「宍戸?なにがだ?」


「名前さんが此処に来た理由って言ったらあの人しか居ないでしょ!」


「少林まで!な、なにがだよ!?」


「…あ、そういえば〜さっき屋上に行く染岡を見たけどー……」


「……!ありがとマックス!」


奥に居たマックスがゲームから目を離さず呟くと名前は病室を走り去る。
半田はまだ状況を飲み込めないようだ。


「??」













「染岡っ!」


勢いよく扉が開け放たれ、黄昏を見つめていた少年は後ろを振り返る。


「――――!!名前っ…お前、なんで…」


「なんでって、私…此処にはちょくちょく報告しに来てるよ…?」


「…っ、そうじゃなくて…!来るなら来るで言えよ…!」


「ご、ごめん……」


突然の来訪者につい声を荒げてしまう染岡。
名前は怒らせてしまったと思い、少ししょげる。


「べ、別に怒ってねえよ…ただ、お前が来ると…舞い上がっちまうから…。」


「……染岡…」


「…だあーくそっ!こっち見んな!恥ずかしい!良いからそこ座れ!」


染岡は目の前の青いベンチを顎でしゃくる。
名前がおずおずと座ると、染岡は手早くその隣に座る。


「…染岡、あのね。」


「……ん?」


「………………」


名前は染岡に近付くと、腕を首に回し、そっと抱きつく。


「……っなっ!…い、いきなり…なんだよ…?」


「私…染岡と一緒が良い……一緒が良いのに…」


「………俺も…同じだ。悔しいとか…寂しいとか…そういうものじゃなくて…なんていうか……」


「………うん。」


「…………………もう少し、もう少しだけ…このままで、良いか…?」


「私も…このままで居たい…」


赤い夕陽が、世界を照らす。
たとえ世界が君に味方しなくても、君がいるから、大丈夫。

これからの事を予感するように、回した腕を強めた。









夕陽が闇に変わっても
(君がいるなら)(そう言いたかったのに)