「今日から此処に配属になりました、名字と申します。」


「うん、よろしくね。僕は担任の小島空。」


「小島先生ですね、宜しくお願いします。」


「ああ〜敬語じゃなくて良いよ、それからね……」













「………はぁ。」


配属になった小隊は驚くほどフレンドリーで、暖かい印象を受けた。
最近小隊長を亡くし、私がその代わりである事なんて忘れるくらい。
田舎の、それも今まで実践経験の無かった警護師団なんて皆こんな感じなのだろうか。





―――冷たい、戦争に興味しかない大人が支配する大都市から来た私には解せない事だ。


挨拶回りも一通り終わった所で残りの1人を探しに行く。

残りの1人は――岩崎仲俊。整備兵だったが隊長がいなくなった事で戦闘兵に繰り上げられたらしい。
性格は温厚で嘘八百。
根無し草で食客なんだそうだ。


(………あれか)


そうこうと考えている間に裏門の前で空を見上げる見知らぬ人影を見つけ、足早に近付く。

すると気配に気付いたのか彼は此方に視線を合わせ、目が合うと柔らかく微笑んだ。


「初めまして。配属された隊長さんですか?」


微笑んだまま彼は頭を下げ問うて来る。
渡された資料より格段に人の良い印象だ。
顔立ちも整っていて体も華奢だ。端から見て、戦に行くとは思えない。


「うん、名字名前。宜しく。」


「宜しくお願いします。僕は岩崎仲俊。」


「それじゃあ、私はこれで。明日からよろしくね。」


礼儀正しく優しい感じだ。
とても嘘八百の根無し草なんて思えない………今は違うのだろうか?


「――あ、待って待って。」


「………?」


「これ、良かったらあげるよ。」


何か小さな赤いものを投げられる。
思わず受け止めた手を覗く。


「………………安産の御守り………」


「僕はいらないからさ。それじゃあね。……あ、今度家に泊めてね。泊まる家が無いときは。」


「………………………………。」


手を振りながら去っていく背中を見つめながら、私は唖然と立ち尽くしていた。




未知との遭遇の対処法
(思いつかない、思いつかない)