04 第七官界彷徨


 うどん屋へ着く頃には既に二人はいつも通りに接し、義勇はたまごあんかけうどんを、宇髄は釜揚げうどんとそれぞれ天ぷらの盛り合わせを頼み、ゆっくりと食していた。
 そして、食べ終わる頃、宇髄の箸が止まり視線が義勇に移動したので義勇も食べるのを止めると、妙な問いかけをされた。
「お前って、男が好きなの?」
 その言葉に、傾けていた湯呑みの中身を口からブチ撒けそうになった義勇だ。
「げほっ!ごほっ、ごほっごほっ!はっはっ、はー……。な、なにを、急に」
「いや……初めての時、お前、俺の誘いに即答だったし、なんかここ最近、すっげえ艶っぽくなって色気が増してる気がしてさ。前からキレーなやつだとは思ってたけど、なんつーか凄みが増したというか。とにかく、すげえキレーになったなと思って。だから男の味覚えて俺との約束の金曜以外にも、夜な夜な他の男に抱かれてるのかなと」
「お、俺はそんな尻軽じゃない!誰彼構わずついて行くほど堕ちてもいないし、ば、ばかにするな!」
「後ろの処女は俺として……お前って誰か女とヤったこととかあんの?」
「それは……な、無いけど」
「だったら、男とはどうなんだ。俺は処女って言葉使ったけど、以前誰かに抱かれたこととかはある?」
「あるはずないだろうが!さっきからなんなんだ。変な質問ばかり……な、なにもかも、お前が初めてだ!というか、こんな会話うどん屋でする話じゃないだろう……!」
「ふうん……」
「な、なんだ。さっきからおかしいぞ。今までそんなことなんて聞かなかったのに……聞かずにいつも、抱いてたのに……」
「まあ、いいや。食おうや。折角のうどんが冷めちまう。話は、また……後でな」
 会計は、宇髄が払った。
 というより、義勇に払わせようとしないのだ。そのことについて以前、訊ねたことがある。どうしていつも奢ってくれるのか、もしくは義勇に奢らせないのか。
 回答は、こうだった。
「なんつーかさ、こういう食い物屋とか行くと、挿れる方が出すもんなんだよ。お前、ヤらしてくれるし。だからいつも払ってる」
 その言い分に少し腹が立ったので、言い返してやった。その言葉がこれだ。
「だったら、俺が宇髄に挿れさせてくれと言ったら、お前は俺に金を払わすのか」
 そう言ったら、宇髄は飲んでいたお冷の水を勢いよく口から噴き出し、噎せたくって散々咳き込み、眼に涙を浮かべながら抗議してきた。
「ぜってーに!オメーには掘らせねえぞ!変なこと考えてんじゃねえよ、このあほっ!」
 だったら、毎回宇髄のモノを後ろで受け入れて、さらにナマで中出しさせている義勇は一体どうなるのだろう。そこまで言い切りたかったが、無駄だということに気づきそれ以来、飲食代含めホテル代もすべて、宇髄に払ってもらっている。
 店を出て、そして改めて車へ乗り込むとゆっくり宇髄の運転する愛車の黒いBMWが動き出し、駐車場から出て公道に乗った。
「なあ、ちょっと買いたいもんがあってさ。寄り道してもいいか」
「構わない。どうせホテルには一晩中いるんだ。べつに、少し行くのが遅くなったっていいだろう」
 返事はなく、車はいつもの道順とは外れ、いつもは右に曲がるところを左に曲がったところで義勇はいま車がどこを走っているのか分からなくなった。元々、行動範囲の狭い義勇だ。
 車は暫く走り続け、だんだんと人気の少なく暗く細い道へと入り、くねくねと左右に曲がる山道を走っていると急にぽつんと灯りが見えた。車はその灯りに向かって走り、プラスチックでできた中の見えない板で囲まれた場所の隣に停まった。
「お前は降りてこなくてもいい。すぐに買い物は終わる」
 そう言って宇髄は車から降り、三つに区切られた板の、車から向かって一番奥に入って行き、すぐ済むと言った買い物だったがそれなりの時間が経っていたと思う。
 徐に戻って来た宇髄だが、手には何も持ってはいなかった。一体なにを買ったのだろう。その疑問は、すぐにホテルで明らかになるのだが。
 そして再び車は引き返す形で走って来た山道を下り始める。
 買い物を終えた宇髄はどこか様子がおかしく、なんだか落ち着かない感じでそわそわとしながらハンドルを回している。
 車はいつの間にか山道を下り終わって広い道に出ていた。それでも義勇には分からない道だったが、そのうちにいつも宇髄が使っているホテルへ向かう道路に出て、義勇は窓枠に腕を乗せて車窓から流れる外の景色を眺めていた。

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