15 積み木くずし


 昨日の夜の狂宴はなんだったのか、朝日は残酷なほどに明るく眩しく今日を照らしていて、義勇は裸にバスローブを羽織り窓際まで歩みそして、街を見下ろした。
 新しい一日の始まりは憂鬱で、身体が重くそして何故か虚しかった。昨日の無茶が響いているのか、アナルの奥から始まって入り口付近がじんじんとした痛みを訴えてきて義勇を苦しめる。
 そのまま突っ立っていると宇髄が起き出し、義勇は無言のまま部屋中に散らばった服を拾い上げつつ、風呂場へと向かった。
 チェックアウトを済ませ、二人は無言で車に乗り込みそしてエンジンがかかると同時に、宇髄がハンドルを回しながら義勇に問いかけてくる。
「朝めし、どこで食う?なんか食いたいモンの希望とかあったら聞くぞ」
「……行きたいところがある。めしもいいが、それよりも行きたいところ。……中央西公園の、湖畔に行きたい。湖を眺めたいんだ」
「まあ、めしは逃げて行かないしな。分かった」
 車は信号でUターンして、中央西公園へ向かう道を走り始めた。
 公園へはここからだと少し遠回りになるが、どうしてもきれいなものを眺めて息を吐きたかった。そのうちに青と白の看板が見え、車はゆっくりと公園の駐車場へと入って行き、白線に沿ってぴたりとつけられ停まる。
 車から出ると途端、冷たい風が襲いかかり義勇から体温を奪ってゆく。すると、それが分かったのか宇髄が心配そうに義勇の顔を覗き込み、頭にポンと手が乗る。
「お前はそこにあるベンチに座って待ってな。公園の隣にあるコンビニであったかい飲みモン買ってくるわ。イイコで待ってるんだぞ」
 そう言って、宇髄は足早に遠ざかって行き、義勇は湖のよく見えるベンチにそっと腰掛け、キラキラと光る水面をじっと見ているとぬっと、目の前に白い蓋の被さった茶色のカップが現れた。
「モーニングコーヒーならぬ、モーニングカフェラテだな。……義勇、お前はこっち。ここ」
 何のことだろうと宇髄を見ると、義勇の隣へ座ったかと思えば膝の上を指さしてくる。
「ここを通る皆に変に思われるだろう」
「誰もんなこと構わねえよ。いいから早くこっちこい」
「重いし、痛いぞ」
 だが宇髄は譲らず、義勇は仕方なく腰を上げ、宇髄の足の上へと腰掛けると片手にカップを持った両腕が身体に回り、背中にスリスリと頬ずりされているのが分かった。
 ひどく乾いていてそれでいて切ない気分だ。言いたい言葉はなかなか口をついて出てくれず、義勇はカフェラテのカップを傾けて少しのどを湿らせ、高く昇った朝日を眺めながら目が覚めてからずっと考えていたことを言葉にする気になった。
「宇髄。俺が別れたいと言ったら、お前はどうする。もうついては行けないと言ったら、お前はなんて答えるんだ」
 すると、宇髄はカップを取り落としぎゅっと両手で義勇の身体を抱きしめた。因みにカフェラテは無残にもベンチの下に落ち、中身はすべてばしゃっという音を立ててコンクリートの上に零れてしまった。
「……別れねえぞ。ぜってー別れねえ。お前がなんと言おうと、世界で一番お前を愛してるのは俺だ」

 離れられない、この男から離れることは絶対にできない。
 義勇は視界が涙で滲み、湖から反射してぼやける光を眺めながら今、その思いが強く心に芽生えつつあるのを感じていた。

END.

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